BRIDGESTONE SL17はどう進化したのか?新旧SLタイヤでの比較テスト

2016年12月1日、SLOよりYAMAHA-SSクラスなどで指定タイヤとされていたBRIDGESTONE製SL07の製造中止、そして後継タイヤとなるSL17が発売されることが発表された。これに伴い、全日本カート選手権をはじめとする全国各地のBS製SL07指定カテゴリーのほとんどがSL17へと指定タイヤを移行、また一部ローカルレースでは開幕戦に限りSL07とSL17両方の使用を許可する動きも出てきている。

SL07は、2007年にこれまでのSL02に代わる新しいSLタイヤとして耐摩耗性を維持しつつグリップ力を向上、「更に楽しく、運転しやすいタイヤ」をコンセプトに開発を行ったという(参照:BRIDGESTONEプレスリリース レーシングカート用タイヤSL07新発売)。SL17に関するプレスリリースは2017年2月2日現在ではいまだ発表されていないが、どのようなタイヤに仕上がっているのかを確かめるために新旧SLタイヤを入手したことは先日お伝えしたとおりだ。今回はその比較テストの模様、そしてそこで判明した事実をお伝えしよう。

開発目標は耐摩耗性の向上

テストを行う前に、どのようなコンセプトでSL17が開発されたのかを、KF(OK)用スペシャルタイヤの開発を担当し、SL17の開発も行ったBS本田真悟さんに話を伺うことができた。

つまるところBSのSL07は他社のSLタイヤと比較すると耐久性に劣っており、ユーザーからの不満の声もあった。グリップを落とすことなく、またタイヤのタレもあまりない状態で、耐摩耗性を向上させる。これがSL17に課せられた課題であったという。であるから、摩耗に不利な条件、例えば路面温度が低い状態やハーフウエットといったタイヤの空転が多くなる状況であれば、SL17の優位性が発揮されるはずである、という話だった。

比較テスト

テストドライバーに佐藤巧望を起用

比較テストをするにあたって、2016年にイントレピッドジャパンコルセより全日本カート選手権KF部門に出場した佐藤巧望選手に協力をいただいた。山口県出身の佐藤選手は昨年のKF瑞浪大会でTTトップを獲得するなど速さを見せつけ、2月1日には今シーズンの全日本カート選手権OK部門への出場も発表された。テストコースは佐藤選手も所属するレーシングカートショップFIORE MOTER SPORTSのホームコースである中九州カートウェイ。シャーシはINTREPID CRUISER、エンジンはYAMAHA KT100SECを用意し、YAMAHA-SSのレギュレーションに準拠したマシンでテストを行った。

テストの手順として、10周→14周→25周の3セッションを2つのタイヤを交換しながらこなすことで、操縦性の違いや耐久性の差を明らかにしていく予定を立てていた。しかし、午後から降り出した雨により25周のロングディスタンステストを行うことができなかったことを予めお伝えしておく。また当日の中九州カートウェイは最高気温が15度ほどと1月下旬にしては比較的暖かかったが、曇りがちな天候であったために時折肌寒さも感じられた。

セッション1:新品10周タイムアタック

まずは新品状態から10周のアタックを行った。空気圧は冷間80kpa(=0.8kgf/cm2)でスタート。計測されたタイムをグラフに起こしたのが図1である。

図1を見ると、SL17のほうが温まりが速いことが一目瞭然だ。最終的なタイムも0.23秒SL07を上回る好タイムを記録した。佐藤選手も「温まりが速く素早くタイヤが機能する」とコメントし、また外から見ていても序盤の修正舵が少なく安定しているように見受けられた。走行後の空気圧もSL17のほうが4輪ともに高い数値となっており、しっかりと熱が入っていたことがうかがえる。SL07での走行が9周で終了しているのは計測に不具合が生じたためである。

操縦性に関しては、SL17は特にリアタイヤのグリップ力の高さがあった。フロントタイヤの手応えはさほど変わらないが、リアグリップが高いがゆえに安定感があった。ここがタイムに差が開いた一番のポイントだろう。

セッション2:14周アタック

続いて14周のアタックを行った。両タイヤともに温間95kpaに空気圧を調整した。

コース上にはエンジンの慣らしをしている車両もあり全ラップでクリアを取れる状態ではなかったためにタイムにばらつきが出ている。特にSL17でのラスト3周は連続してクリアラップが取れなかったゆえに大きくタイムダウンしている。

ここでも傾向としては序盤でのSL17の温まりの良さが見えるが、両タイヤとも1度走行したためかそれほどの違いは見受けられない。しかしSL17が9周目に記録したベストラップをSL07が上回ったのは、13周目のベストラップが出たタイミングであった。

佐藤巧望「新旧SLタイヤはともにタイムが出てからのタレはほとんどなく非常に安定しているもの、やはり序盤はSL17の優位性が際立つ。今回SL07は終盤でベストラップが出たことから、おそらくSL07を新品で10周走った時には適切な温度まで温まらなかった可能性も考えられるだろう。SL17はいったん冷えたせいか、リアタイヤの強さもありフロントタイヤの抵抗感もあり若干アンダー方向へと操縦性が変化したが、それでも前後のグリップバランスはSL17のほうが好印象。リアタイヤが強い分だけ安心して攻めることができる。」

セッション3:レインスリック

午後からパラパラとした雨が降り出してしまった。しかし、雨はさほど強くなることはなく路面もうっすらと濡れた状態であったため、もともと予定していた25周のロングディスタンステストを変更、レインスリックでそれぞれ10周走行した。

明らかにレインタイヤのほうが優位なコンディションであったためにタイム計測などは行わなかった。またこのようなコンディションではさすがに操縦性という点ではSL07、SL17に差はなかった。ただし、タイヤの空転が多く摩耗に不利な条件となるため、開発コンセプトである「耐摩耗性の向上」が見やすくなるはずだ。

左:SL17 右:SL07

さて、雨スリックも含め計35周走行したタイヤの写真がこれである。左がSL17、右がSL07であり、中九州カートウェイでは最も摩耗に厳しい右リアタイヤをピックアップ、写真上側が進行方向である。タイヤそのものの形状の違いもあるが、右のSL07は特に内側が斜めに削れているのに対し、SL17は全体がきれいに摩耗している。内側の穴の深さを計測してみたところ、新品時は双方ともに深さ3.0mmであったが、SL17が2.8mm、SL07が2.6mmと明らかな差が生じていた。もちろん10周程度のレインスリックで一気にここまで摩耗したわけではないが、ドライコンディション時にじわじわと表れていた耐摩耗性能の差がここにきて如実に表れた形となった。

総括:SL17はSL07の正常進化版

今回のテストで、SL17は温まりが非常によく、また耐摩耗性の向上も明らかにみられた。操縦性に関してはリアタイヤのグリップ力向上が見られ、まさにSL07の正常進化版だといえる結果を得た。ワンメイクレース用タイヤであるために操縦性の変化という点はあまり意味のある事ではないが、温まりが良いことによりさらに白熱したレース展開が見られる可能性もある。また耐摩耗性の向上はユーザーにとって何よりもうれしく、まさにスポーツ&レジャーの精神を体現したものだろう。耐摩耗性に関してはさらなるテストが必要だろうが、そちらはユーザーの皆様にお任せをしたい。また操縦性に関しては同条件で比較したからこそ分かる程度の軽微なものであったことを付け加えておく。最後になったが、今回のテストに協力していただいた佐藤巧望選手、中九州カートウェイ、FIORE MOTER SPORTS、ほかご協力いただいたすべての人々に感謝の意を表し、今回の比較テストを終了する。

関連情報

関連記事

ページ上部へ戻る