KFマシンのシートポジションを考察する

注意事項

今回の記事には多くの推測が含まれ、またそれの根拠の正確性が低い。このことを念頭に置いたうえで以下の内容を読み進めてほしい。

レーシングカートにおけるシートポジションの重要性

この世に数多あるモータースポーツの中で、レーシングカートはドライバーの身長や体重に左右される割合が比較的高いカテゴリーだと考えられる。例えば2016年の全日本カート選手権KF部門であれば、ドライバー込みでの最低重量は158kgであり、ドライバーの体重を55kgとすると重量のおよそ1/3をドライバーが占めていることになる。また車体そのものの重心高も極めて低いため、重心高を左右させる一番の要因がドライバーであることも間違いない。このように、ドライバーによってマシンの重心位置が変化するものはバイクが挙げられるが(バイクの場合は「ライダー」だが)、FRP製のバケットシートが備え付けられているレーシングカートでは、バイクほど走行中に自由なフォームを取ることはできない。すなわち、レーシングカートの重心位置はドライバーとシートポジションの相関関係によっておおよそ決定づけられる、ということだ。

重心位置と操縦性の関係性

重心位置が変化すると操縦性にどのような違いが生じるのか。下に重心位置によるメリット・デメリットの一例を書き出した。

重心位置 メリット デメリット
前方  ハンドルがよく効きシャープに曲がる オーバーステアに陥りやすい
後方 リアタイヤの安定性が向上 アンダーステアに陥りやすい
低い 高速度域での安定性の向上 低グリップ路面でのグリップ不足になりやすい
高い タイヤに荷重をしっかりと掛けることができる タイヤへの負荷が増え消耗が激しくなる

実際のところこれ以上に様々な利点・欠点が存在し、またそれはシャーシやカテゴリー、その時のコンディション等によっても変化していくが、いずれの場合においてもメリット・デメリットはギブアンドテイクの関係にあり、最適解を導き出すのはなかなか難しい。さらにシートポジションの変更は、セッティングの作業としては面倒な部類に入るのであまり触りたくないのが正直なところ。ただマットを挟むことで重心位置を上方や前方に移動させることは簡単にできるので、試してみるのもありだろう。

余談だが、特にジュニアやカデットではやたらとシートを後ろに下げたがる傾向にあるようで、それによりハンドルの下のほうを持たざるを得なくなっているドライバーを多数見かけるが、それよりも正しいドライビングポジションで運転したほうがいいレースができるようになるのではないだろうかと筆者は常々考えている。重心位置よりも運転のしやすさのほうが特に若いドライバーには重要なことであるし、運転しやすくなることで結果的にタイムが向上する可能性も十分に考えられる。

KFドライバーのシートポジションをチェックする

というわけで、KFドライバーたちのシートポジションをチェックしていきたい。シャーシ・エンジン・タイヤのすべてが自由に選択できるKFでは、ワンメイクカテゴリー以上に様々な思想でセッティングされたポジションを見ることができるはずだ。今回は2016オートバックス全日本カート選手権SUGO大会に出場した全25名のシートポジションをチェックしていく。

測定方法

シートポジションを計測する方法として、一般的にはキングピンからシート頂点までの距離を測定するなどの方法が挙げられるが、さすがにそんなことをレース中に行うのは困難を極める。というか断られる。というわけで、SUGO西コースのバックストレートを走行するマシンを真横から動画で撮影する、という方法を取った。残念ながらPaddock Gateでは今のところハイスピードカメラを持ち合わせていないので、不本意だがアクションカメラを使って120fpsでの動画撮影を行った。ゆえに撮影された映像は魚眼レンズによるひずみが生まれた状態となっており、マシンとカメラとの距離の違いによって映像のひずみ方に差ができてしまった。はじめに「数値の根拠に正確性が欠ける」と記述したのはこのためだ。

そうして撮影した映像の中で、各マシンがちょうど映像の中央に来るコマを取り出し、フロントホイールの中心に原点を設定、ヘルメットの頂点部分(赤矢印部分、肩の真上)の座標を画像編集ソフトにて割り出した。

またバックストレートを走る位置によって微妙にマシンの大きさが変わってしまうため、全てのマシンをゼッケン2番のフロントホイールやタイヤサイズを参考にサイズを統一したのち、同様の方法にてヘルメット頂点の位置を測定した。

測定結果

そうして測定した結果を上のグラフに示す。測定した時点でのすべての座標は単位がピクセル(px)であるが、EXPRITのホイールベース(1045mm)を参考に単位をmmに変換した。プロットした点を使用するタイヤメーカー別に、ゼッケン番号の周囲を使用するフレーム別に色分けしてある。

グループ1:ヨーロッパ志向のリア寄りセッティング

赤枠で囲った4台はきわめてリア寄りのポジションを取っており、また4台とも共通してOTKグループのシャーシを使用している。これはヨーロッパのトップカテゴリーでよく見る傾向だ。OTK系の高い旋回性能をうまく利用しながらリアタイヤの荷重を増やしてスライド量を抑制させている。ただしフロント荷重が減る分だけ操縦にはちょっとしたコツが必要になるはずだ。当たり外れが大きいセッティングといえるかもしれない。もちろんこれだけが原因ではないが、実際に「ハマれば爆発的に速い」ドライバーが揃っている印象がある。

なかでもゼッケン24大草りきのマシンは、他と比べてもやりすぎではないかと思うほどにラジエーターが寝かされている。シートステーもシートの折り返し部分にかなり近く、明らかに重心を低く後ろ寄りにしようという思惑が強く表れている。

グループ2:YOKOHAMAはまだグリップ不足か?

前後位置は他と大差ないものの、重心位置だけがやたらと目立って高いグループにはYOKOHAMAの2台が含まれている。重心が高いということは、同じスピードでコーナリングしていてもタイヤに荷重を掛けやすくなる半面、タイヤへの負荷が大きくなる分だけ消耗も激しくなる。おそらくYOKOHAMAは他2社に比べてもまだグリップが不足しているが、それを補うべくあえて重心高を上げているのだと考えられる。ただそのせいで耐久性に問題を抱えているのだろう。同時にレインコンディションでのパフォーマンスの高さもここに起因していることが容易に想像できる。

仮にそうであれば、2017シーズンはYOKOHAMAにとって飛躍の一年になるかもしれない。OKはKFに比べて最低重量が13kg軽い145kgとなり、コーナリングスピードの向上はあるものの全体的なタイヤへの負担は大幅に減少されるだろう。また昨年の最終戦鈴鹿大会では小高一斗がついに3位表彰台を獲得する大活躍を見せた。参戦10年目となる2017シーズン、DUNLOP、BRIDGESTONEと対等に戦える日はすぐそこまで来ている。

グループ3:基本的かつ完成されたセッティング

多くのドライバーがひしめき合うこのグループ、測定の誤差が大きいので実際にはどれもさほど大きな差はないだろうと考えられる。ベーシックだが研究しつくされたシートポジションだと言えよう。このグループに限った話ではないが、全体として重心高はDUNLOP → BRIDGESTONE → YOKOHAMAの順で高くなっていく傾向にある。昨今のKFのタイヤメーカー勢力図をそのまま表していている。確かに理屈の上から言ってもハイスピード化が進めば進むほど低重心のメリットが生かされてくるのだが、これからも身長の低いドライバーが活躍するであろうことが推測される。そのうち寝そべって運転するようになるんじゃなかろうか…。

グループ4:やはり前寄り重心には問題ありか

こういう言い方は気が引けるのだが、この3台は実際のリザルトから言っても何らかの改善をしたほうがいいだろう。これを見るに他に比べて極端に前寄り、上寄りのシートポジションを取っていることは間違いなく、単純にこれが原因だとは言えないがいい影響を与えているとは考えづらい。2017シーズンの開幕を控えた今だからこそ見直す必要があるだろう。

OKでは変化してくるはず

シャーシやエンジン、タイヤが異なるKFではシートポジション一つとっても様々な違いが見受けられたが、ハイスピード化が加速するKFではやはり後ろ寄り・低重心が重要要件となっていることが露見する結果となった。ただしこれは昨年までの話。今年からはOKへと移行しフロントブレーキも廃止され重量も13kg軽くなる。ダイレクトドライブとなることでエンジンブレーキの効き方なども変化し、セッティングの方法などもまた考え直す必要が出てくるはずだ。実際に2016シーズンからOKに移行したヨーロッパでは純正シートの形状が変更されたメーカーがあるなど、時代は常に動いていることを実感させられる。各チームの試行錯誤の日々は続いていく。

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