シーズン直前!OKエンジンの勢力図を見る

ついに2017年の全日本カート選手権も先日の3月26日に琵琶湖スポーツランドで開幕し、東地域やOK部門の開幕戦となるSUGO大会まで1か月を切った。西地域第1戦では2015-2020CIK-FIA公認フロントフェアリング取り付けキットによる影響が少なからずあり相当な台数がペナルティの対象となっていたが、このルールをどう対処していくのかは今シーズンの注目どころの一つになるのかもしれない。

さて今シーズンの最注目ポイントといえば、やはり最高峰カテゴリーがKFからOKに移行した点だろう。最低重量が13kg軽くなるのはもちろんだが、エンジンがOKレギュレーションに適合したものに切り替わり、エンジンチューナーたちはまた新たにエンジンの開発を行っていかねばならなくなった。しかしながらこれは、KFが長く続いたことによる勢力の固定化から解放され、下位に沈みがちであったチームが表彰台に姿を見せるような勢力図の変化のキッカケになるに違いない。我々は2月某日に行われたBRIDGESTONEとYOKOHAMAによる合同タイヤテストを取材したことで、OKエンジンの”今”を見ることができた。

OKカテゴリーの主な変更点

カテゴリー KF OK
最低重量 158kg 145kg
フロントブレーキ 有り 無し
排気量 125cc 125cc
冷却方法 水冷 水冷
ウォーターポンプ 内蔵 外付け
クラッチ 有り 無し
スターター 有り 無し
バッテリー 有り 無し
デコンプ 無し 有り
排気バルブ 2枚 1枚
最高回転数 15,000rpm 16,000rpm
エンジン改造 自由 自由

OKエンジンはパワーダウンする?

単純に考えて最高回転数がKFから1,000rpm向上しているので、OKエンジンはKFよりもパワーアップするだろうと考えがちだが、そうとは限らないらしい。TOYOTA YAMAHA RACING TEAMの監督を務める北条氏は、OKエンジンの排気バルブはKFが2枚だったのに対し1枚へと減らされたことによりトルクの出方が大きく変わってしまうほか、ピストンの最低重量が定められたことなどによりパワーダウンする可能性を指摘していた。そこで2月のタイヤテストではKFエンジンを搭載していたADVAN HIROTEXの小高一斗と、同じYOKOHAMAタイヤを履きOKエンジンを搭載していたCrocPromotionの三村壮太郎を比較してみてみたところ、KFのほうがOKよりトルクがある分だけS字区間は速いが、鈴鹿南コースの長いストレート区間ではOKのほうが良いタイムを記録していた。ここに排気デバイスと最高回転数の違いがはっきりと現れていた。タイムはKFを駆る小高一斗のほうが若干劣っていたのだが、これはエンジンの特性というよりもこの2名がこなしていたYOKOHAMAタイヤのテストメニューの違いによるものだと考えられる。またOKはガソリンの消費量がKFよりもさらに多いという情報もキャッチした。これは単純に最高回転数+1,000rpmの影響によるものだと考えられる。

排気デバイスのスプリング締め込み量のほか、スプリングそのものの交換により各チームは排気バルブの動き方を調整している

押し掛け復活!

OKエンジンはクラッチ&セルモーターを廃止しダイレクトドライブのマシンに原点回帰した。その分押し掛けを容易にするためにデコンプバルブが装着されている。筆者も何度か押し掛けを補助してみたが、マシンを持ち上げずともスルスルっと押せるため、リアスポイラーによる押し辛さはかなり軽減されていることを実感した。その一方、押し掛けの要領が掴めずオロオロとしているドライバーの姿が多くみられた。OKには若いドライバーも多く参戦を予定しているが、そのほとんどがダイレクトドライブエンジンを経験したことがない世代となっているためだ。とあるドライバーは早々に従来の飛び乗るスタイルでの押し掛けを諦め、「殿様スタート」と揶揄されるドライバーが座った状態からメカニックに押してもらうスタイルに切り替えていた。往年のドライバーのような華麗な押し掛けがレースで見られる日は来るのか。

またピットインしてエンジンを停止させるときの姿にも変化が生じた。ドライバーはみな右手をエンジンヘッドに添えて「プスプス」と少し気の抜けるような音を立てながら停車していくのだ。デコンプバルブを手で押すことで圧縮を抜いた状態にしているのだが、エンジン内部に進行方向と逆回転の力が生じることを抑制しカウンターウエイト周りの破損を防いでいるのだ。デコンプにそんな使い方があったかと感心する一方で、見慣れていないとなんだか音が間抜けでかっこいいとはいいがたい。すぐに慣れてしまうのだろうとは思うが…。

TM / IAME / VORTEXの性能差

前評判ではIAMEが速く、公認が切り替わるタイミングではTMが遅いというジンクスがあるためイマイチかもしれない、という話だったが、TM・IAME・VORTEXの3メーカーが一度に走ったこのタイヤテストを見る限りどれもそこまで大きな差は無さそうだった。ここで昨シーズンの最終戦を見てみると、エントリー台数24台中TM18台、VORTEX4台、IAME2台とTMが圧倒的シェアを誇っていた。さらにエントリーリスト上はTM以外のエンジンでもレースではTMを使っていたチームもあったため、実際にはさらにTMのシェアが高かった。なぜTMは75%ものシェア率を誇ったのか。これは各エンジンの特性と、全日本カート選手権ならではのスペシャルタイヤの使用が強く影響している。それぞれのエンジンには、全体的にトルクの太いTM、中速に強いIAME、高速の伸びがあるVORTEXというおおよその性質がある。日本独自のタイヤ開発競争により異次元のグリップを発揮するスペシャルタイヤを路面から引きはがすためにはTMのトルクの太さが必要となり、結果TMの占有率が非常に高くなったのだ。

昨シーズン圧倒的なシェアを誇ったTM

青いヘッドが特徴的なIAME

高速の伸びに定評のあるVORTEX

タイヤテストではOKエンジンを搭載していた13台のうちTM2台、IAME5台、VORTEX6台という割合となっていた。もともとDUNLOPユーザーのほうがTM使用率が高かったため、DUNLOPが参加していない今回のタイヤテストではTMが少ないのは必然だが、その中でも昨シーズンTMを搭載していたTeam Birel ARTの名取鉄平とRICCIARDO NEXUSの野中誠太がIAMEに、NEXUS Competitonの児玉和也がVORTEXへと切り替えていた。またINTREPID JAPAN CORSEの開発ドライバーを務める井上寛之がVORTEXとTMを重点的にテストしていたので話を聞いてみたところ、KFの時とエンジンの特性は変わらず、乗り味としてはVORTEXが低・高速に強く、TMは中速しかない、ということだった。ただそれは”乗り味”としての話であり、実際に他エンジンと一緒に走った際に立ち上がりやストレートで差が生まれるかといわれると、そのようなことはほとんど見受けられなかった。少なくともこの時点では3つのエンジンの実力は拮抗していたのだ。ただVORTEXは以前から高速の伸びがいいが立ち上がりが遅く、路面が重くなってくると苦しくなることが考えられる。OKは最低重量145kgと軽くなっているためKFほど気にはならないかもしれないが、そこは実際にレースをしてみるまで分からない。

熟成はこれから

BRIDGESTONEとYOKOHAMAによる合同タイヤテストを取材したことで、2月時点でのOKカテゴリーの動向をおおよそ把握することができたが、シーズン開幕までまだ1か月ある。この時点ではおそらくまだ箱出し状態に近いチームがほとんどであっただろうし、実際にOKエンジンが現場で一台も壊れなかったことからもまだチューニングを攻め切れていないことが見て取れた。その一方で積極的にエンジンを乗せ換えているチームの姿もあり、エンジンチューナーたちはすでに多くのことをテストしようとしていることも判明した。エンジンチューナーたちの戦いの火蓋はすでに切られている。

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