2017全日本カート本庄:初開催のサーキットをどう捉えたか

2017オートバックス全日本カート選手権本庄大会では興味深いデータが確認された。BS、DLタイヤではタイムは同じでも最高速度が異なり、さらにギアセッティングも少し異なる、というデータだ(2017全日本カート本庄 金・土曜日練習走行)。これまでもBSのタイヤは比較的コンパクトに作られているという認識はあったが、それが数字として表れた形となった。

ところで、国内カート競技規則によりレーシングカート用のタイヤサイズはある程度定められており、スーパーカートを除くとリム直径は最大5インチ、フロントタイヤ外側直径は最大28cm、リアタイヤ最大直径は最大30cmである。最小を定められていないことからも一般的にはタイヤ外形が大きいほうが有利だということがわかるのだが、コンパクトなタイヤを用意してきたBSはそこにどんな策を練ってきたのだろうか。

前後方向を意識したタイヤ

Paddock Gateでは毎回金曜日に各タイヤメーカーの開発者へインタビューを行い、用意してきたスペシャルタイヤの仕様について記事にしてきた。大抵の場合、企業秘密が多分に含まれるため仕方がないことではあるが、具体性に乏しい内容になりがちなのだが、今回のインタビューではBS本田氏から興味深い話を聞くことができた。それは、

「本庄はSTOP & GOのサーキットであるため、長い直線を生かすためコーナーの進入・立ち上がりでの優位性を持つべくタイヤの前後方向を意識してきた」

という部分だ。一般的に考えると、偏平率が高い(サイドウォールが厚い)タイヤのほうが偏平率が低い(サイドウォールが薄い)ものよりも接地面積が縦長になるため、加減速に優位な構造となる。今回のBSタイヤは他社に比べると明らかに外形が小さいが、その分サイドウォールを丸く成型することで疑似的に高偏平率タイヤのような形状を持たせているようだ。他にもトレッド面の剛性など様々な工夫はあるのだろうが、これこそが「前後方向を意識した」ことの1つに違いない。しかし前後方向に長い接地面を持つタイヤとなると、必然的に横方向の設置面積が減少しコーナリングフォースの低下に繋がってしまうはず。ところがBSタイヤはDLに比べるとコーナリングで有利に立っていた。その謎の答えはタイヤ外形の小ささだけでなく、コーナリング中のタイヤ変形にあった。

3メーカーのタイヤの変形を見る

タイヤが変形している様子を観察するべく、本庄サーキット2個目のヘアピンコーナーである3コーナーの、クリップ直前で最も横Gがかかっていると考えられるポイントを狙い撮影を行った。

その様子をまとめたのが上の写真である。撮影された角度がそろっていないため厳密に見比べることはできず、また全てが同程度の荷重がかかった瞬間の写真だとは断言できないため、以下に記述することはあくまでも「この写真から読み取れること」である。

ぱっと見て明らかにリアタイヤの変形量が多いのがBSだ。停止状態のそれから大きく伸びたサイドウォールにより設置面積が横に長く伸びていることが見て取れる。コンパクトで丸いタイヤにしたことにより不足する横方向のグリップをコーナリング中の変形で稼いでいるのだ。ただその分だけタイヤからの反発もあったようで、どちらかといえば硬い方に分類されるシャーシを駆るドライバーの中には、セットアップが難しくコーナリング中の跳ねに苦しめられている者もいた。フロントタイヤがこれだけ形状を保ちながらもリアタイヤが大きく変形しているのだから、一部のシャーシの特性と合わなくなってしまうのも致し方がないことだったのかもしれない。

DL、YHは共にリアタイヤの変形量は大差ないように見られる。二社のタイヤは比較的大きめに作られているので、サイドウォールが高くなる分腰砕け感をなくすために横剛性を高めざるを得ないためだろう。またYHはフロントタイヤのサイドウォール部分がDLよりも伸びているように感じられる。YHはフロントタイヤが最も長方形に近い形状をしていることからピーキーなハンドリングになりがちなことが考えられるが、そこをあえてたわませることで回避しているのか。特にバイアスタイヤの場合、縦横の剛性感をはっきりと区別して作ることはラジアルタイヤに比べると難しいため、このバランスをどう調整してくるのかは各技術者の腕の見せ所だ。

”高速サーキット”か”ヘアピン主体”か

この本庄サーキットという初舞台を各タイヤメーカーがどう捉えたのか。究極的にはそこへたどり着く。タイヤのプロファイル、変形の仕方、そしてレース前のインタビューから考えるに、DLとYHは”高速サーキット”であると考えたのに対し、BSだけが”ヘアピン主体のサーキット”であると考えたのではないか。結局のところ本庄サーキット大会ではそのコースレイアウトから、コンパウンド・プロファイル・構造の違いによる影響は大きくなく、最終的にはドライバー同士の勝負となったレースではあった。しかし過去のデータがないサーキットに照準を当て開発し、異なるアプローチで開発されたタイヤが表彰台を争ったことは事実である。差が出にくいサーキットだったからこそ、開発チームのセンスや技術力を存分に試すことのできた一戦だったのかもしれない。

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