DUNLOPの次世代コンセプト?!大径タイヤはどれだけ大きいのか【2017全日本カート選手権】

8月に行われた全日本カート選手権瑞浪大会では、木曜日の練習走行が始まって早々にOK関係者の中で一つ事柄が話題になった。それは、DUNLOPのリアタイヤがこれまで見たことがないほどに大きい、ということ。その大きさは、横に比較対象がなくとも明らかに大きく見えるほどであった。果たしてそのタイヤはどれだけ大きいのか、そしてその狙いとは。

BSより1.1倍大きいDLタイヤ

さて、このDUNLOPのタイヤがどれだけ大きいのかを比べてみるために、フェスティカサーキット瑞浪で各社のリアタイヤを真横から撮影した。それを画像編集ソフトを用いてホイールサイズを基準に画像のサイズをそろえ、比較できる状態にしたものが下の写真である。

左から順番にBS→DL→YHと並んでおり、直径を比較しやすいように白(BS)黄(DL)赤(YH)の水平線をタイヤ上部に引いている。この写真だけ見るとBSタイヤがあたかもフロントタイヤのように見えるが、間違いなくリアタイヤである。

画像からそれぞれのメーカーの外径(直径)の差を割り出した。わかりやすいように最も小径のBSタイヤの外径を100.0とすると、他メーカーのタイヤはそれぞれ、

BS:100.0
YH:105.4
DL:110.3

という結果になった。これは尋常ではない違いだ。地方FS-125や各地のローカルX30クラスで使用されているDUNLOP SL9を例にとってみると、その外径は前後で

F:262mm
R:278mm
(参照:ダンロップモータースポーツ&スポーツ タイヤカタログ

である。つまりSLタイヤであればその外径は、フロント:リア=100:106ぐらいの関係に収まっている。DLが瑞浪から投入している大径のリアタイヤは、仮にフロントにYHやBSのリアタイヤを装着したとしてもタイヤ直径だけで考えればほとんど違和感がないほどに巨大だということだ。

大径タイヤのメリット=耐摩耗性能の向上

これほどまでに巨大化させたリアタイヤでDLはいったい何を狙っているのか。それはひとえに耐摩耗性能の向上だろう。例えばあるコースを1周するためには、BSユーザーであればリアタイヤを1万回転させねばならないとする。するとタイヤのスリップ量の違いなどを全く無視した場合、BSよりも1.1倍大きいDLタイヤは、同じコースを一周するのに9066回転しかしなくていい計算になる。つまりBSとDLでは1周につき934回転の差が生じるが、これがTT+予選+決勝でおよそ50周のラップをこなした時、その差は46700回転となり、DLタイヤはBSタイヤ換算でコースを4.7周分少なく周回してきたことと同等となる。仮に同じようにタイヤが消耗していったとすれば、DLタイヤはその回転数の違いの分だけ決勝終盤に余裕が生まれる、ということだ。

とは言ってもレースの周回数は変わらないのだから回転数の差で耐久性が向上したところで意味はないのではないか、という疑問が生まれるのは当然だ。しかし耐久性が向上した分だけグリップレベルを上げられるとすればどうだろう。むしろDLの真の狙いはここにあるはず。グリップレベルを上げタイムがコンマ数秒上がりコンパウンドの耐摩耗性能が低下したとしても、4.7周分稼いだタイヤ外形がそれを補うため耐久性能そのものは変化しなかったとすれば?最終的なグリップは他社と同様だったとしても、レースが終わるころには他メーカーとは途方もないタイムギャップが生じていることだろう。

しかし残念なことに瑞浪・もてぎと投入されたこの新型タイヤは、今のところそこまでの優位性を生んでいない。むしろ大部分のDLユーザーにとってはうまく働いていないようだ。それもそのはず、これだけ外径に変化があるとマシンの車高も大きく変化するため、まず前後バランスが大きく崩れる。これを合わせようとDLユーザーの多くは特に後ろの車高を低く設定しているが、想定外のタイヤサイズのためかどのドライバーもセッティングやドライビングの修正に追われている。またかなり高くなったサイドウォールは剛性の確保が難しく、特にS字の切り替えしなどではもたついているように見えるし、さらに一部のチームからはタイヤそのものの質量が増しているために、立ち上がりが遅れかつエンジンへの負担も増えているという話も入ってきている。実情としてこの大径タイヤに対してユーザーはあまりよくない印象を抱いているようだ。

ただこれは現時点での話であり、もし何らかの技術革新が行われデメリットが払拭された場合、上に述べたようなメリットが如実に表れるだろう。これだけ大きなコンセプト変更には長期的な視点が必要不可欠であり、タイヤ以外にもセッティングやドライビングの変更も必須である。今シーズンはすでにDLユーザーである佐藤蓮がシリーズチャンピオンを決めてしまったため、最終戦となる鈴鹿ではもしかするとコンパウンドや構造などの見えない部分でかなり大胆なアプローチをとってくる可能性も考えられる。次世代コンセプトに固執し失速するか、技術革新により常識を覆すか。DUNLOPの行く先には、レーシングタイヤの一つの未来があるのかもしれない。

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