2022年10月22~23日、全日本カート選手権EV部門のレースが史上初めて開催された。TOM’S EVK22のワンメイクとなった新設部門で初の優勝を手にしたのは、今年TOM’Sからスーパーフォーミュラライツに出場している小高一斗であった。JAFが管轄する初のEVレースだったこともあり多くの注目を集めたこの大会であったが、明らかにおかしな点が存在した。
2名のドライバーが、レギュレーション違反のはずの四輪用レーシングスーツを着用していたのだ。
レーシングカート用スーツの着用は義務
全日本カート選手権では革製もしくはJAF/CIK-FIA公認のレーシングカートスーツの着用が義務付けられている。これは全日本カート選手権統一規則だけでなく、JAFの定める「カート競技参加に関する規定」においても明記されており、全てのJAF公認競技会において適用される。
第21条車両検査
4.ドライバーの服装に関しては「カート競技会参加に関する規定」第11条を適用する。また車両検査時においては、技術委員の点検を受けるものとする。レーシングスーツは皮製またはCIK-FIA公認またはJAF公認のものとする。
2022年全日本カート選手権統一規則
また、ヘルメットはCIK-FIA技術規則(Article 3 Kart and Equipment Safety 3.2)Equipment Safety)に従ったものとする。
第11条 ドライバーの服装
次に掲げるドライバーの服装は、競技を安全に行うため、装備の一部と見なされ、車検時に技術委員の承認を得なければならない。
2.レーシングスーツ: すべてのJAF公認競技会において、皮製もしくはJAF公認レーシングカートスーツまたはCIK-FIA公認レーシングカートスーツの着用が義務づけられる。 ただし、CIK-FIA公認レーシングカートスーツまたはJAF公認レーシングカートスーツともに、公認有効期間が満了した後、さらに2年間JAF公認の国内格式以下の競技会で使用することが認められる。
カート競技会参加に関する規定
もちろんこれはEV部門においても同様であり、四輪用スーツの着用は明確な規定違反。全日本カート選手権統一規則のペナルティの例によれば、服装違反は当該タイムトライアルやヒートの失格という処分が与えられる。
JAFが内密に四輪スーツの使用許可を出した
そもそも四輪用スーツとカート用スーツは保護する目的が異なる。脱出に時間がかかる四輪では火災から身を守る防炎性を、クラッシュ時に路面等への接触リスクがあるカートでは耐引き裂き性を重視した規格が採用されている。四輪用スーツはアスファルトに擦れることを深く考慮されていないし、その逆もしかり。故にカート用スーツを四輪競技で、四輪用スーツをカート競技で使用することは安全上の理由から認められていない。
またカート用スーツには使用期限が明記されており、レギュレーションで定める期間を過ぎたレーシングスーツで公認競技に出場することは不可能。参加者はスーツの痛みの他に使用期限もチェックして、都度買い替えを行うのが一般的となっている。
ところが信じがたいことに、特別規則書への記載も公式通知も行われていないが、EV部門に限り四輪用スーツの使用を許可する特例措置がJAFから当該ドライバーに対してのみ内密に出されていたという。一体どういう理由があり、明らかに安全を軽視した、実に不公平で道理に合わない措置が行われたのだろうか?