先日SL全国大会で一般公開されたトヨタ自動車が開発中のGRカートですが、今回は鈴鹿サーキット南コースでのメディア向け試乗会に参加してきました。プロドライバー達によるデモレースなども行われましたが、今回はGRカートの乗り味などについて、私の感じたことをオンボード映像(記事最後に掲載)とともにお届けします。
雨の中のGRカート試乗
今回の鈴鹿南コースで行われた試乗会ですが、残念ながら天候は雨。路面は完全なウエットコンディションであり、試乗車は先日登場したSHINKOのレインタイヤを装着していました。また先導車有りで速度をかなり制限された状態での乗車体験となったことをお断りしておきます。


しっかりとドライビングポジションを合わせられる
まずは乗車してシートポジションを合わせます。シート上面が手をつきやすい形状になっており、乗り込みはとても安心感がありました。ペダル位置とハンドルのチルト調整をワンタッチで行えるため、自分にしっくりと合うポジションに合わせるために必要な時間はごくわずか。レンタルカートは背中に詰め物をして調整することもありますが、そのような無理がないので、座っていて不快感がありません。GRカートは様々な体格の人が乗れるようにシートの幅も大きいのですが、今回は左右の詰め物は無しで走りました。
シートに収まりハンドルに手を添えると、ハンドルはとても握りやすく感じました。フォーミュラカーのような形のハンドルは、人によってはテンションが上がるポイントかもしれません。




レインタイヤがグリップしすぎ?パワー感は4st200ccなり
SL全国大会のデモレースはドライコンディションにスリックタイヤを使っていましたが、普段のカートレースではスピンしないようなところでスピンする様子が見られました。そのため少し注意しながら走り始めましたが、すぐに感じ取れたのはSHINKOレインタイヤのグリップの高さです。このレインタイヤは明らかにグリップが高く、S字に入る頃には不安を覚えることはありませんでした。非常に安定感があり、速度が遅いのもありますが縁石に引っ掛けずともしっかり車が曲がっていきます。
先導車にペースを制限されているので全開で走れてはいないのですが、このレインタイヤはGRカートの速度感に対してグリップが高すぎるように思います。一方で安全に楽しく走れるという観点では良いと思います。ドライタイヤで走れていないのでなんとも言えませんが、もしかするとレインタイヤのほうがスリックタイヤよりも速いタイムが出てしまうのではないでしょうか?

エンジンパワーについては4st 200cc前後の汎用エンジンなりです。レーシングカートの2stエンジンのようなガツンとくるパワー感はありませんが、レンタルカートより車両が軽い分だけよく走ります。スポーツカートはシャーシがレーシングゆえにさらに軽快に感じるので、GRカートはスポーツカートとレンタルカートの中間のパワー感です。静止状態からの加速感はレンタルカートに近いように思いました。レインタイヤのグリップが高いので判断が難しいですが、少なくとも今回はコーナー立ち上がりでリアが出るようなパワーは感じ取れませんでした。
音に関しては静かで、MZ200などとそう変わりがありません。アクセルオフでのアフターファイヤでパンパンと音が鳴ったりもしないので、残念ながら音やパワーで特別な高揚感を得ることはありませんでした。

走る楽しさは十二分!
一方で、「アクセル全開で走れたらもっと楽しいのだろう」という感覚が常にありました。この理由はおそらく機敏に動くシャーシと、しっくりと来るドライビングポジションにあります。無理なくしっかりとアクセルやブレーキ操作ができるので、操る楽しさをダイレクトに感じ取れます。今回はリブプロテクター無しでシート左右に隙間がある状態で乗ったのですが、これが逆に荷重移動のやりやすさに繋がっているように思いました。縁石にガツンと乗っても衝撃が少なめ、車重が軽く動きが機敏で、今までのカートとは明らかに乗り味が異なります。ぱっと乗ったとは思えないほどの乗りやすさと楽しさがGRカートにはありました。
全開で走れていないため限界領域の動きまで知れたわけではありませんが、少なくとも今回の試乗で私はGRカートの悪い所を見つけられませんでした。ただデモレースを担当したあるプロドライバーからは「直感的な楽しさはある一方で、ナロートレッドからくるハンドルのピーキーさとグリップのスッポ抜けがあった。攻め込んでいくと初心者はすぐにスピンしそう。」というコメントを頂きました。SL全国大会でのドライコンディションでの走りを含めて、全開で走ったときにはまだネガティブなポイントが残されている様子です。

2026年秋の発売を予定しているGRカートは、まだ今回のモデルが最終製品版というわけではないそうです。ドライでデモレースでの走り、そして雨でのプロドライバーのコメントから察するに、入門者向けカートとして製品化するためにはまだまだ改良点が残されていそうです。しかし、ベースとなる「車を操る楽しさ」は十二分に備わっていると感じました。
ポジションをしっかり合わせられる点や軽快な車両の動きは、明らかにレンタルカートとは差別化されています。一方でレーシングカートほどのハードさはなく、週末に気持ちよく汗をかけるスピード感に抑えられています。これが30万円台で手に入るのはバリュープライスでしょう。2026年秋の発売が非常に楽しみですが、その前にまずドライで全開で走ってみたいですね。