4月末にスポーツランドSUGOにて開幕した全日本カート選手権OK部門。その速さは前評判通りで、なんとKF時代のコースレコードをコンマ8も更新する驚異的なスピードを披露した。あの衝撃から早1か月、6月3・4日に、全日本カート選手権OK部門第3・4戦が埼玉県 本庄サーキットにて開催される。
全てが未知数の本庄サーキット大会!
本庄サーキットは埼玉県本庄市にある、普段は四輪やバイク用のミニサーキットである。2005年の開業以来、首都圏からのアクセスが良好であることから関東圏でも人気のミニサーキットとしての地位を確立、特に今年もD1ストリートリーガルの地方戦であるDIVISIONAL SERIES CENTRAL DIVISIONを7月29日に開催予定などドリフトで有名なサーキットだ。全長1112mとミニサーキットとしては平均的な長さではあるが、最大直線長260mは鈴鹿サーキット国際南コースのバックストレートより70mも長い。さらにコース幅も12~15mとレーシングカートが走るコースとしてはかなり広く、11のコーナーを持つが実質的には長い直線をヘアピンで結んだ超高速コースレイアウトとなっている。
今年、本庄サーキットでは全3戦の本庄カートレースを開催してはいるが、基本的にレンタルカートないしスポーツカートのイベントを開催してきたコースである。全日本カート選手権はトップカテゴリーがラインナップされていない大会を2013年から4年連続で開催している。トップカテゴリーの開催は今回が初めてだ。レーシングカートの練習走行日もほとんどないため地元勢というものが存在せず、ドライバー間にコースに対する習熟度に差がほとんどないといってもいいだろう。さらにそれはタイヤメーカーやエンジンチューナー、メカニックにとっても同じことである。トップカテゴリーが開催されていなかったことから特に西地域に籍を置くチーム・ドライバーにとっては全く未知のサーキットであり、短いレースウィークの間にどれだけの情報を吸収することができるかが勝利へのカギを握っている。
超高速レイアウトを制すのは誰だ?!
直線とヘアピンを組み合わせた幅員の広い高速レイアウトであるため、単純に考えてタイヤ3メーカー間の実力差は2017年のOK開催コース中最も少ないだろう。タイヤメーカーにとっては全くデータがないため、事前に行われたタイヤテストでどれだけの収穫があり、それをどれだけ本番用タイヤに生かせるかに全てがかかっている。タイヤテストの前日が四輪のグリップ走行であったか、あるいはドリフト走行であったかによっても得られる情報量に大幅な差が生じてしまうのは明白であり、普段レーシングカートが走らないサーキットであるためテストデーとレース当日のコンディションが全く異なるものになることも容易に想像できる。これはつまり純粋な開発力の差が試されるということである。この本庄サーキットでの勝利は、タイヤメーカーにとっては今シーズンどころかこれからの全日本カート選手権の戦いを運命づけるものになるのかもしれない。
王者の陥落、BSの不調。DL勢の好調が続く?!
開幕戦SUGOでは2014年から3年連続6連勝を誇っていた佐々木大樹×BRIDGESTONEの最強タッグがついに陥落した。日曜日の午前中に行われた第1戦では1位2位がDUNLOP、その後ろ5台がBRIDGESTONE、YOKOHAMAタイヤはタイヤに致命的なエラーが発生し3台ともに完走すらできない状況であったが、西日がまぶしく照り付ける夕方に行われた第2戦では、3位にBRIDGESTONEが食い込むものの上位をDUNLOP勢がほぼ独占、さらに4位にYOKOHAMAが上り詰めてきたことにより時代がまた一つ変わっていったかのような印象さえ覚えた。レース内容からもDUNLOPが一番安定してレースをこなせるようで、他よりも一歩有利な状況か。しかし各社ともに性能の限界を突き詰めるべく超ピーキーな温度領域でタイヤが機能するように設計されてしまっているため、路面温度や気温がほんの数度変わるだけでレースの結果に大きく影響を及ぼしてしまう。ここの所全国的に気温が大幅に向上し、最高気温が30度近くなるところも出始めてきたが、そのあたりをどう予想してきているのか。
本庄サーキットを経験しているドライバーは9人
2013年からの本庄サーキットでのリザルトを見てみると、過去このコースでの全日本カート選手権を経験しているのは9名いることが分かった。各ドライバーの出場レースと決勝の順位を現したのが下の表である。
2013年 | 2014年 | 2015年 | 2016年 | |
---|---|---|---|---|
#3 名取鉄平 |
FP-Jr 3位 |
地FS-125 2位 |
全FS-125 5位 |
– |
#6 大草りき |
地FS125 3位 |
全FS-125 6位 |
– | – |
#11 上原拓和 |
– | FP-Jr 4位 |
FP-Jr 4位 |
全FS-125 3位 |
#15 児玉和也 |
– | 全FS-125 7位 |
全FS-125 9位 |
– |
#16 武井遥斗 |
FP-Jr 4位 |
地FS-125 4位 |
全FS-125 2位 |
全FS-125 2位 |
#24 宮下源都 |
– | – | – | 全FS-125 6位 |
#27 西村拓真 |
全FS-125 6位 |
– | – | – |
#30 小川颯太 |
– | – | 全FS-125 16位 |
全FS-125 5位 |
#85 佐藤蓮 |
FP-Jr 1位 |
地FS-125 1位 |
全FS-125 1位 |
全FS-125 1位 |
この中で圧倒的なのは#85佐藤蓮。ステップアップしていったすべてのカテゴリーで優勝というすさまじい成績を残しており、まさに現時点での本庄マイスターと言える。開幕戦SUGOでは2連勝を飾り、本庄サーキットに対しても絶対的な自信を抱いていた。そんな佐藤と常に同じカテゴリーで戦い、4年連続で本庄大会に出場しているもう一人のドライバーは#16武井遥斗。特に2015・2016年の全日本FS-125では2年連続2位を獲得している。開幕戦ではスペシャルタイヤの洗礼を受けたか本調子とはいかなかったようだが、それを克服すれば本大会の優勝候補の一人に数えられるだろう。#3名取鉄平もこの2名と同じようにステップアップしてきているが、2016年からは戦いの場をいち早くKFに移し、ルーキーにしてシリーズ3位という大活躍を見せた。そういう意味で他の8人よりも優位な状況に立っている名取の活躍を大いに期待したい。
ベテラン勢も負けていない
2014年以降3年連続で開催コースが変わっていなかった全日本カート選手権トップカテゴリーではあるが、だからと言ってベテラン勢が未経験のサーキットに対応できないはずがない。また高速サーキットということで高回転域を得意とするVORTEXエンジン搭載勢が上位に進出してくる可能性が考えられるだろう。そこで名前が挙がってくるのは#5高橋悠之。今年の第1戦では3位表彰台を獲得したTONYKARTワークスドライバーは、TONYKART×VORTEX×BRIDGESTONEの王道パッケージの力を存分に発揮させ、また熱いバトルを得意とする高橋であるからスリップストリームでの超接近戦を演じてくることは必至だ。また3人のルーキーが参入したEXPRIT RACING TEAM JAPANを引っ張る#20澤田真治にも期待したい。澤田のドライビングは少々タイヤに厳しいのではないかという評価も聞かれるが、2015年にシリーズ2位を獲得していることからもその実力は折り紙付きである。タイヤの摩耗には優しいと考えられる本庄サーキットではスピードを発揮してみせるか。
しかし「瑞浪に似ている」というキーワードで頭に浮かんでくるのは#2朝日ターボ。5台いるEXPRITの内唯一TMエンジンを搭載するが、昨年の瑞浪ではレインコンディションの中他を寄せ付けない圧倒的なスピードを見せ堂々の2連勝を飾った。SUGOでは単純にスピードが足らずに2位に甘んじてしまったようだが、この本庄で表彰台の頂に上り詰めることができるか。また#13三村壮太郎も上位進出が必至だと考えられる。YOKOHAMAはまだ他社に比べるとパフォーマンスを発揮しきれるコンディションの幅が狭いようだが、しかしそこにハマってしまえば第三勢力とは呼べないほどの実力を見せ続けている。コースレイアウトから考えればサーキットとの相性も悪くないはずだ。#17野中誠太は昨シーズン目立つ活躍がなかったものの、今年の開幕戦SUGOでは第1戦4位、第2戦3位というBRIDGESTONE勢の中で最も安定して上位を走行したドライバーへと進化し、次戦の活躍十分に期待できる。
ここまで8人のドライバーをあげてきたが、トップカテゴリー初開催のこのサーキットでの勝者を予想するのは困難であり、それは同時に誰が買ってもおかしくないという意味でもある。今回のレースはすべてのセッション、すべてのドライバーが注目ポイントだ。6月3日・4日の本庄サーキットから目を離すことはできない!
本庄サーキットへのアクセス
公共交通機関の場合
残念ながら現在本庄サーキットへ公共交通機関で来場することはできない。このため、最寄り駅である八高線 児玉駅あるいは上越新幹線 本庄早稲田駅からタクシーを利用する方法となる。
自家用車の場合
関越自動車道 本庄児玉ICを降りて約20分で到着する。