レーシングカートのセッティングの中で変更が簡単なわりに変化が大きいものとして「リアシャフトの2ベアリング化(2ベア)」がある。リアシャフトを支えている3つのベアリングの内、真ん中の一つの固定を外し、リア周りの剛性を意図的に落とすセッティングである。主に路面グリップが上がっていった際にリア周りの動きが悪くなる対策として行われることが多く、夏場にハイグリップタイヤが多く走っているコンディションの場合に選択肢として浮上してくることが多い。単純に2ベアにセッティングした場合、コーナーの入口オーバー、出口アンダーという操縦特性になっていくはず。
レーシングカートは3ベアリングが基本で、2ベアセットはオプションというのが一般的な常識である。ところがここ数年のOK部門を見ていると、そもそもセンターベアリングが存在しないマシンメイクが行われているケースが多々見受けられるようになった。これはいったいどういう状況なのだろうか?詳しく見ていこう。
2ベアと3ベアの勢力図
検証の舞台として選んだのは、2021全日本カート選手権鈴鹿大会のOK部門第2戦決勝ヒート。34台がフルグリッドで決勝レースに挑んだセッティングを観察する。木金曜日が雨だったとはいえ路面上には十二分にコンパウンドが乗り、2ベアセッティングの選択肢が十分に視野に入っているはず。
3種類のセッティングに分類した結果がこちら。【センターベアリング未装着車両】のことをここでは【センター無し】と表現した。なんと過半数となる18台のマシンがセンター無し=2ベアを前提としたマシンメイクとなっている。残り16台の内7台はベアリングホルダーのボルトを抜いた2ベアセッティング、そして9台は3ベア、ベアリングホルダーの固定ボルトを半分だけ外した所謂「2.5ベア」状態のマシンは発見されなかった。
2ベア前提マシンと結果的に3ベアセットになったマシンでは、シャーシで分けるとはっきりとした差が現れる点が非常に興味深い。話をよりわかりやすくするため、まずは対象のOKマシンをシャーシ系統で分類してみる。