「KTでカートを楽しんでいる人たちが参加できる、とにかくかっこいいレースをやるんだ。ぜひ出てくれ!」
という話をKRPさんから聞いたのは、確か去年の年末ごろだったような気がします。
僕はその昔KRP主催のM4やオープンマスターズカートシリーズに出場したこともあるのですが、あの時のサーキット一面がスポンサーカラーに彩られた空間はそれはそれはかっこよくて、あの雰囲気は本当に好きだったなぁなんて思い出しました。「あんな感じのかっこいいレースがKTを使うホビーカーターでも楽しめるならいいですね~、はっは~」なんて調子良く返事していたら…
本当に出ることになってました。
濃いメンバーが集結したMOTUL KT CHAMP
今回出ることになったのはMOTUL KT CHAMP 2023というレースで、鈴鹿サーキット国際南コースを舞台に全3大会が行われます。1大会2レース制なので全6戦ですね。基本的には現行SL YAMAHA SSクラスや全日本FP-3部門に準拠したレギュレーションなのですが、違いは大きく4つあります。
一つは年齢が当該年度18歳以上であること。また最低重量は153kgとYAMAHA SSから+8kg、スーパーSSやFP-3から+3kgとなっています。さらに今年はKT100SD(ダイレクト)が使用可能なので、『SLがセル付きだけになって重量的に厳しくなってしまった…』という方にもかなり出場しやすい車両規則が取られています。そしてMOTULが冠スポンサーなので、MOTUL KART GRAND PRIX 2Tがエンジンオイルとして指定されています。
普段SLレースを楽しんでいる人でも、重りを足してオイルを変えれば即出場可能なのはありがたいですね。カテゴリーが変わってエンジン積み替えるのは何かと大変なので。
ただ、僕のPAROLIN×KT100SECは去年の10月にSL全国大会でディヴィジョン2に行ったときからほぼ何も変わっていません。あの時に遅かった原因はわかってはいるのですが、今のところ解決していません。このままでは上位は確実に無理。でも今回はホビーカーター向けのレースらしいので楽しめればそれでいいか~と気軽にエントリーしてみたら…
!?!?!?
なんだこのガチ勢の集まりみたいなエントリーリストは。
KTを骨の髄までしゃぶり尽くしたような猛者中の猛者や、以前はトップカテゴリーを走っていた人たちが集まる濃度の高いレースになっており、さらにはプロドライバーもちらほら居ます。もうちょっと真面目に準備してくるべきでしたが、時すでに遅し。
一方、金曜日の朝にコース入りした時点で最終コーナーがMOTULカラー一色に染まり、コース中に協賛各社のノボリが立てられています。パドックにはスポンサー各社のブース出展があり、メカニックには特製MOTUL Tシャツが配られ、ドライバーはしっかりとメイクさんに髪の毛などを整えてもらった上でのプロフィール写真撮影も行われました。このような素晴らしい演出がKRPのレースの魅力であり、出場するレースの価値を高めてくれる部分だよなと改めて思いました。今どき珍しい参加賞もたくさんいただき、レースが始まる前から満足度が高いです。
…なぜそのパドックなどの写真が無いのかって?それは4月に配信開始するKRPオリジナルのYouTube番組「Road to CHAMP」で皆さんに楽しんでいただくためですね。ぜひとも動画で、色鮮やかに演出されたレースをお楽しみください。決して写真を撮り忘れたわけでは・・・。
決勝1
いい具合にスリップが使えたTTだったのですが、根本的なスピードの遅さはいかんともしがたく28台中20位となりました。MOTUL KT CHAMPは1大会2レース制で、TTの結果を元に第1戦の決勝が始まります。周回数は18周。鈴鹿ローカルレースの決勝は通常16周なのでそれよりも2周長い設定です。
グリッド上ではメカニックにMOTULやDUNLOPの傘を持ってもらい、マシン・ドライバー・メカニックがきれいに並んでスタート前の集中力を高めます。
スタートは抜群に決まり2コーナーまでに4~5台をオーバーテイク。しかし場所が悪くバックストレートでイン側に付けません。大外刈りできればなと思ったのですが、3コーナーに入ると少し前のマシンがハーフスピン、さらに内側のマシンも外方向に振られたため、サイドを軽く接触した後にオーバーランを強いられました。これで一気に順位を落としほぼ最後尾までドロップ、前方集団とも大きく差が開いてしまいました。
ただ練習走行の時から思っていたのですが、結構アグレッシブな走りをするドライバーも多いので、機を待っていればどうにかなるような気がします。実際にちょこちょこと脱落してきたドライバーたちをパスしていくと、自然と順位が上がっていきました。途中でついつい予選ヒートな気分になっていたのですが、周回数を確認したら残り10周と書いてあってびっくりしたのはここだけの話です。
ところで、スピードを少しでもどうにかしようとTTの後にキャブレターの大幅なセット変更をしたのですが、それがやりすぎた様子でエンジンがもたつきます。スピードが無い中どうにかバトルを戦い、22位となりました。
決勝2
第2戦のグリッドは第1戦のベストタイム順で決定されます。僕は26番手グリッドでした。先程のキャブセットはやり過ぎはしましたが良い方向だという確信があったので、少し調整をして第2戦決勝に挑みます。
スタートはバッチリ決まり、随所で発生するスピンやクラッシュを回避して順位を上げます。キャブセットもいい感じでトルクフルな感触。ただここで致命的なミスに気が付きました。
そう、第1レースまではいまいち走らないマシンに合わせたギア比選択をしていたので、ドリブンスプロケットが大きすぎるのです。ついでにこのヒートはリアのトラクションを上げるセットアップをしてみました。結果、立ち上がりだけはべらぼうに良いのにそこから先が全く伸びず、高速コーナーはドアンダーなマシンになってしまいました。困りましたが、もう走る以外に出来ることは無いので工夫して戦いましょう。
入口でバンバン刺されるのにクロスラインで必ず抜き返す通せんぼジジイと化しつつもなんとかして順位をキープ。すると徐々に周囲のドライバーは疲れてきたのかふらふらし始めました。つまりチャンスです。相手の方がベストタイムでは上回ってますが、自分がミスらなければ追い抜くことも可能です。
終盤に差し掛かると、後方に対しては若干のマージンを築きつつ、前方のドライバーはすぐにでも抜ける間合いに入りました。ただペース的には全く分がないので、最終ラップあたりに抜こうとタイミングを待つとしましょう。しかし、ラスト2周になると前方のマシンのストレートスピードが急に速くなりなりました。一体彼に何が起きたのですか???そんなわけで為す術なく21番手あたりでフィニッシュ。スタート直後の混乱でフロントフェアリングが落ちてしまっていたので、結果は25位となりました。
大人が真剣に競い楽しむレース
相変わらずの準備不足っぷりを露呈してしまったレースでしたが、不思議と「楽しかったな」という感想が心の中には強くありました。これは参加者全員の和気あいあいとした雰囲気もさることながら、KRPの手によってレースが全体的に華やかに演出され、なんだか気分が良くなってしまったせいに違いありません。KRP、相変わらず恐ろしい組織です。
MOTUL KT CHAMPは第2大会が7月16日、第3大会が8月13日に、同じく鈴鹿サーキット国際南コースにて開催されます。大人が真剣に競い合うこのレースは、ハイレベルで満足感の高いレースを楽しみたい、そんなあなたにオススメです。僕も7月までにはもうちょっとハイレベルを目指します・・・。