フロントスタビレス、センターベアリングレス、サブシートステーレス…。カデットシャーシはシニアシャーシに比べてシャーシ剛性を調整できる幅が極めて少ない。それは装備の簡素化によるコスト削減などが理由なのだが、とはいえコースやドライバーに合わせたセッティングを詰めていくときに、そこには無いあと一歩の調整範囲が欲しくなる場面も存在する。 オートパラダイス御殿場で行われた2024年GPRシリーズ第8戦、ジュニアカデット部門で優勝した今村昴星のPAROLINには、そのあと一歩を突き詰めるHIGUCHI RACING TEAMの技が仕込まれていた。 シートの固定方法をフレキシブルに JECKO製シートが極めて強めに寝かせて装着しているため、かかとを置く位置が嵩上げされている点以外、一見すると特に特別なことはされていないように見える今村昴星のPAROLIN。ただよく見ると、 シートとフレームをつなぐ4本のボルトには、いずれもカラーとしてウレタンブッシュが使用されていた。一般的にここにはアルミ製のカラーや、PAROLIN純正ではプラスチック製のカラーが使用されることが多い中、HIGUCHI RACING TEAMはそれよりも遥かに柔らかいウレタンブッシュでフレキシブルにシートを固定。フロアパネルのセンターボルトも抜いていることから、かなりシャーシフレックスを重視したセッティングを施していた。 シニアシャーシでもさらなる柔らかさを狙ってメインステーをボルトを緩めるセッティングも存在するが、そもそもシートが固定されなくなるのでデメリットが大きい。ウレタンブッシュをカラーにするのは安全性と再現性の両方で優れた方法と言えるだろう。