レインコンディションの場合、 スプロケットを数丁上げるフロントトレッドを最大限広げるリアトレッドを最小限縮める という3項目さえやっておけば「とりあえず無難に走れる」という状態になる、というイメージを持っている人は多いだろう。しかし、もしかするとそのセオリーは変わりつつあるのかもしれない。 レインコンディションでのワイドリアトレッド 「カウルからリアタイヤが突出していなければならない」というルールに沿って、レインコンディションとなると、ほとんどのマシンのリアタイヤはサイドカウルとリアスポイラーの端面を結んだ線状ギリギリの横幅までリアトレッドを詰められる。しかしその一方で、雨天となった2019オートバックス全日本カート選手権茂原ツインサーキット大会でのSUCCEED SPORTS Jr.の高木悠帆と辻本始温のマシンは、どう見てもリアタイヤの突出量が多いのだ。 これを行うためか、この2台のCRGのリアには旧型のCRGロングハブに加え、OTKの旧型純正マグホイール(MXP)が装着されていた。OTKマグホイールは他社製品よりもホイール端面が外に出るオフセット量が設定されているのだが、SUCCEED SPORTS Jr.はこれを利用しリアトレッドを稼いでいるようだ。旧型CRGハブのPCDは実はOTK製のそれと微妙な差しかないため、MXPのような形状のホイールであれば小加工で取り付けが可能である。 リアトレッドを広げるとコーナリングフォースが強まる一方で、アンダーステアが強くなる傾向になる。これは全体的にグリップが不足しアンダーステアに悩まされるレインコンディションでは不都合なため、リアトレッドを狭めるのがセオリーである。しかし逆に捉えれば、フロントのグリップ不足がない限りはリアトレッドを広げたほうが良い、とも言えるかもしれない。 結果として高木悠帆は、豪雨の茂原ツインサーキットをものともしない高い安定感のある走りを見せ、第5戦で優勝、第6戦で3位表彰台という好成績を手に入れた。フロント周りのアライメントは特別なことが行われているようには見えず、このシャーシにどのような秘密が隠されているのかは非常に興味がそそられる。