新生カートタイヤブランドNEXXIVEが第一弾として2024年4月23日に発売したのが、S1KとS1Lという名のついたレンタルカート用のハードコンパウンドタイヤです。メーカーによればS1Lはレンタルカート用のロングライフモデルという立ち位置に対して、S1Kは少しグリップを増したモデルとのこと。実際にS1Kは関東周辺のスポーツカートレースやK-TAIで指定タイヤに選ばれており、スポーツカートやホビーカーターから高く注目されています。
今回はグリップ重視タイプとなるNEXXIVE S1Kの独自テストを実施しました。大分県のカートコース ソニックパーク安心院にもご協力いただき、スポーツカートでの使用を視野に入れて、通常のレンタルカートよりもかなり速いエキスパートカートに履かせてみました。期待の新ブランドタイヤの実力を見ていきましょう。
NEXXIVE S1K:グリップ重視のレンタルカート用タイヤ
NEXXIVE S1Kはレンタルカートやスポーツカート向けとして、耐摩耗性と適度なグリップ力を両立させたハードコンパウンドタイヤです。かつてスポーツカートで圧倒的な支持を得ていたYOKOHAMA ADVAN EDが開発時の性能比較対象として設定されたそうで、グリップ力の高さには期待できます。
ところでNEXXIVEは製造がタイ王国で、しかもこれまでカートタイヤを作ったことのない工場で作られています。その情報を耳にした時、僕は国産タイヤとどう違うのか気になっていました。実際にS1Kを手に取ってみると、安価な海外製タイヤにありがちな型の合わせ面の雑さや妙な匂いみたいなものは無く、とても質が高そうな印象を受けました。
また片面のみですがサイドウォールに印刷されたNEXXIVEのロゴが2色刷りなのは驚きました。印刷面の上から保護もされており、ビードが上がった途端にロゴが吹き飛ぶ悲しみを味わうことは無さそうです。ロゴの印刷は性能に直結する部分ではありませんが、新ブランドに対する熱い情熱が感じられます。
S1Kは現在フロント用の4.5×10.0-5と、リア用の6.0×11.0-5の2サイズが展開されており、テストでも同サイズのものを使用しました。近々一般的なレーシングカートで使われるリア用7.1サイズの発売を予定しているとのことで、幅広い楽しみ方ができるタイヤかもしれません。
S1Kの希望小売価格はフロントが税別5,900円、リアが税別7,100円。つまり1セットでは税込28,600円です。国内ブランドのカートタイヤでは珍しく希望小売価格が設定されています。
使用目的が違うとは言えDUNLOP SL22が税込37,840円であることを考えれば安価ですが、同じような使用目的のEIKO UNILLI(税込19,800円)に比べると高価です。ドライビング性能や耐久性でどの程度バランスが取れるのか気になるところ。
以前テストしたDUNLOP KE-1はレンタルカート用タイヤとしてはやたらと軽量でした。S1Kはそれに比べるとずっしりとした重量感がありますが、海外ブランドのレンタルカート用タイヤに比べれば軽量に仕上がっています。トレッド面はかなり分厚く、それはサイドウォールにもつながっているので、手で持つと硬さを感じます。リアタイヤに関しては楽に手組みできたのですが、慣れないとフロントタイヤを組むのには時間がかかりました。
しっかりしたハンドリングと適度なグリップ!カートの動きができるS1K
タイヤが組めたので実走テストに移りましょう。テスト車両はソニックパーク安心院のエキスパートレンタルカートです。これはBirel N35にSUBARU EX21を搭載したスピードの速いレンタルカートで、普段の状態ではノーマルレンタルカートから5秒程度速いラップタイムで走行できます。重量のあるスポーツカートというイメージでよいでしょう。空気圧はメーカーに推奨された冷感120kPaでスタートさせます。
レンタルカート用タイヤなので、あまりウォームアップなど意識せずにコースイン。ド新品の状態ではハンドルに軽さを感じますが、徐々にしっかりした手応えが出てきます。走り出しから持っているグリップの7割ぐらいは出ているような印象で、コースを半周もすれば不安感は全くなく、探りを入れなければ2周目にはベストラップに近いタイムで走れます。ウォームアップは不満のないレベルで高いです。
NEXXIVE S1Kでまず最初に驚かされたのがハンドリング性能です。レンタルカートという乗り物は往々にして重たくタイヤが低グリップのため、ハンドルを切ってもフロントタイヤをズリズリ地面に押し付けてるだけ、みたいな印象が僕の中ではあります。しかしS1Kにそんな虚しさはありません。ハンドルを切った瞬間から応答し、しっかりとタイヤがねじれ、コンパウンドが路面を掴み、コーナリングフォースが立ち上がっていきます。リアもそこに追従し、わずかなスライドを伴いながらクリップに向かっていきます。クリップを過ぎてアクセルを踏めばしっかりとトラクションがかかって、次のコーナーへとマシンが走ってきます。
この軽快でダイレクトな動きはまさにカートの魅力そのもの。とても楽しくドライブできます。タイムも通常状態より1秒以上速く、グリップの高さを実感します。
実のところN35にSLタイヤを履かせれば同じような動きにはなるのですが、全くの素人に乗せるにはグリップが高すぎるしピーキーになりがち。S1Kはそのあたりのバランスが取れていて、マイルドでアンダー気味な動きに抑えられています。あえて無理なスピードで突っ込めばゆっくりとフロントから逃げてアンダーステアになり、リアもそれに合わせるようにじわじわと逃げていきます。これから車がどう動くのか、とても予想のしやすい素直な動き方をしてくれるので、幅広いドライバーが安心して乗れると思います。
とはいえ若干気になる点もあります。まずタイヤのよれが大きいのか、ハンドルの手応えが重たく感じること。またこれはテスト車両のせいもあるでしょうが、攻め込んでいくとリアタイヤの横剛性が無いのかリアの踏ん張り感が弱いのと、ブレーキを踏んだときの止まる感じが薄い気がします。ただリアの動きは旋回性の高さにもつながっているようで、Rが大きくアクセル全開で曲がるコーナーでもリアが引っかかる印象がありません。なのでちょうどいい塩梅にも思えます。
また温まると転がり感が低下し、ストレートでは少しエンジンパワーが食われているような感触があります。12周ほど走ってチェックすると、エア圧は温間140kPaまで上がっていました。タイヤ表面はしっかり発熱しており、タイムは完全に頭打ちです。とはいえ熱ダレでタイムが落ちる傾向はなく、ほぼベストタイムを維持して走り続けることが可能です。
エア圧を上下させた際のタイムや動きを確認
感触的にエア圧を高めたほうがより良いタイムが出そうなので、大胆に200kPaまでエア圧を高めて再アタックします。