レーシングカートにも空力の波が来るか?!OTK M7フロントパネルの効果やいかに

”空力”というものがレーシングカートにとってどれだけ影響を及ぼすものなのか。これは時たま話題になる事柄だ。現代のレーシングカートでは前後左右に樹脂製のカウルが付いているが、近年この形状を工夫しブレーキやラジエーターに風を送ろうとしたり、空気抵抗を減らそうとするメーカーの動きが多く見られている。そんな中OTKが投入した新型のフロントパネルがついに6月に日本に上陸し、全日本カート選手権本庄大会で投入された。

超大型のOTK M7フロントパネル

それがこのM7フロントパネル。フロントスポイラーからハンドルにかけて弧を描くようなデザインで、その中心部が大きくえぐられているのが最大の特徴。この形状ゆえにゼッケンパネルは別部品となっている。

従来のM6フロントパネルと比較するとその大きさがよくわかる。M7フロントパネルは上下方向へのふくらみはもちろん、左右方向へも一回り大きい。

巨大なフロントパネルといえばPAROLINを思い出すので、IKA2018で撮影したそれと並べてみる。上下方向へのふくらみという点ではM7フロントパネルのほうが勝っているが、マシン前方向についてはPAROLINの大きさが目立つ。

このM7フロントパネル、その形状はもちろんのこと、価格がM6フロントパネルの5倍以上も高価であることも話題の一つである(M7フロントパネルキット:29,000円 / M6フロントパネル:5,250円[執筆時点の価格]参照:TONYKART JAPAN)。それほど高価であるにも関わらず、全日本カート選手権本庄大会ではOK部門の21台中9台がこの新型フロントパネルを採用し、下位カテゴリーでも現地で購入して装着したマシンがちらほら見られた。確かに話題性の高いパーツであると同時に、本庄サーキットはストレートが長くハイスピードサーキット(OKマシンで最高速度は約135km/h)であるがゆえに、空力パーツを投入するにふさわしい舞台であったことは間違いない。果たしてその効果やいかに。

エンジンの熱ダレ対策には効果ありか?しかしドラッグ低減には疑問が残る

M7フロントパネルについて、我々は本庄サーキットで様々なドライバーにその効果のほどについて聞き込みを行った。そこで得られたドライバーたちの実感については、以下の四点にまとめられる。

  1. ヘルメットに風が当たらない
  2. ラジエーターやエンジンに風が当たり熱ダレが減った
  3. ストレートスピードが伸びたように思えた
  4. スリップストリームでの追いつき方が良くなったように思えた

1点目に関しては真実であろう。これはレース前にTONYKART RACING TEAM JAPANがFacebookページで動画を公開しているため、そちらを見ていただきたい。

 

今週末は全日本カート選手権OKのRound3&4🏁

今回から投入の[M7フロントパネル]の空力テストをしてみました😊

M6とM7の顔に当たる風の違いを確認出来ましたよ❗

※上段:M7 下段:M6

TONYKART RACING TEAM JAPANさんの投稿 2018年5月31日木曜日

M7フロントパネルはセンターのくぼみが特徴的だが、そのくぼみは最後には上に立ち上がっているのでここで風が跳ね上がり、ヘルメットの上を空気が通過する設計になっている。カウルの後端で強く空気を跳ね上げたことによるドラッグと、ドライバーに直接当たることによるドラッグ、そのどちらがより強い空気抵抗となるのか、という点には疑問が残るが。

2点目については、そのような効果が発生する可能性は否定できない。M7フロントパネルの形状を見る限り、M6フロントパネルよりもサイドにスムーズに風が流れるようになっている。左右に分けられた風はエンジンやラジエーターに当たり、水温の上昇を抑えるだろう。空冷エンジンであっても同等の効果は見込まれるので、これからの暑い時期はM7フロントパネルとそれ以外ではレース終盤のエンジンの熱ダレに違いが出てくるのかもしれない。

3・4点目については相反する事柄である。スリップストリームでの追いつき方がよくなったということは、すなわち平常時のドラッグが増えストレートスピードが落ちた事が原因だと考えられる。もし「スリップから抜け出しても失速しない」という話であれば低ドラッグ化していると言えたのだが…。いずれも具体的なデータに乏しく、そのような感覚がしたという域をでない話であったので、まだまだ調査が必要である。

問題は重量 テクニカルサーキットでは不利に働く可能性も

M7フロントパネル最大の難点はその重量にあるだろう。Paddock Gateではまだ測定していないので正確な重量は不明ながら、手で持った感覚ではM6カウルに比べて500gほど重たい様子であった。また、その形状ゆえに重心位置がM6フロントパネルに比べかなり高い位置にあるように感じられた。おそらくそれが一番の原因だろうが、コース内で観察していると、コーナリング中、特にアクセルオンのタイミングでM7カウルが大きく左右に揺れているのが非常に気になった。重量への対策としてTONYワークスはカウルステーに補強バーを一本入れていた。

コラムサポートにつけられたゴムブッシュ(?)の存在も気になる

M7フロントパネルの重量による影響を疑似的に再現しようとするならば、M6フロントパネルの上部・ゼッケンナンバー付近に水が満杯に入った500mLペットボトルを括り付けることになるだろう。高い位置に置かれたバラストによりフロントタイヤへの負荷が増し、さらにコーナーの進入やS字などの切り替えしでは車の動きがわずかに遅れることは容易に想像できる。それがどの程度タイムに影響するかは不明ながら、M7フロントパネルはその重量ゆえに、テクニカルなサーキットでは優位性を発揮できないのではないのではないだろうか、というのが我々の見解だ。ただもしかすると、雨の場合はM7カウルの重さが有利に働くかもしれない。

もちろんこれは2018全日本カート選手権本庄サーキット大会で判明・実感・推測されたことに過ぎず、実際のメリット・デメリットについてはまだまだ検証の余地が多く残されている。とかくエアロダイナミクスというものは複雑怪奇であり、この段階で評価を決めつけるのは早計だろう。Paddock Gateでも機会を見てテストを行いたい。

TONYワークスはさらなる低ドラッグパーツを投入

TONYKART RACING TEAM JAPANの2台は、超高速レイアウトの本庄サーキット対策としてM7カウルに加えフロアパネルの延長も行っていた。スタビライザーの取り付けパイプを絶妙に避けるようにカットされた薄いアルミ板が、フレームとフロアパネルの間に空いた三角形の穴をピタリと埋めていた。レギュレーションに違反しない範囲内でのフラットボトム化による空気抵抗の低減を目標としているのは間違いないが、実際の効果がどの程度のものなのかは不明。しかし練習走行だけでなくレースにも投入していたので、少なくとも問題はないようだ。

フロアパネルの空力といえば、2016シーズン後半にADVAN HIROTEXが投入していたディフューザー形状のものが思い起こされる。このような空力パーツが今後レーシングカートの世界でも増えてくるのかもしれない。

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