はじめまして。広崎哲也と申します。今回からPaddock Gateにて連載を担当することになりました。「Jrカーターの栄養学」と題し、栄養の基礎知識から具体的な食事法や、レースに勝つための食事について解説していきます。
まずは私のプロフィールを簡単にご紹介します。
私はアスレティックトレーナーとしてトップアスリートのサポート行っています。現在スーパーフォーミュラに参戦している野尻智紀選手を、ルーキーの頃からサポートしてきました。また約20年間のレースサポートの経験から、カート・ジュニアフォーミュラなどに参戦する若手ドライバーの育成も行っております。
そんな私がなぜ食事に対してのお話をするのか。 それは食事がトレーニングの基本だからです。
今回の連載では主に成長期のドライバーに向けた情報を書いていきますが、ホビーカーターの方々にも十分参考になると自負していますので、よろしければお付き合いください。
5大栄養素とその役割
第1回目は、栄養の基本となる5大栄養素その役割について説明します。栄養の基本を知ることで、個人に必要な食事が何か?何が足らないのか?など知ることができるようになります。
- たんぱく質
- 炭水化物(糖質)
- 脂質
- ビタミン
- ミネラル
これが5大栄養素と言われるもので、私達の身体を形作り、エネルギーとなり、調子を整えてくれています。それぞれの役割について見ていきましょう。
たんぱく質
私達の身体は頭の先からつま先まで全てたんぱく質でできています。
英語名のProtein(プロテイン)はギリシャ語のProteiosを由来としていますが、これは「第一の」を意味する単語です。すなわちたんぱく質は、生命の根底を創る最も大切な栄養素として命名されています。
たんぱく質を構成するアミノ酸は20種類あり、体内で合成されない必須アミノ酸と、体内で合成される非必須アミノ酸に分類されます。
- 必須アミノ酸(体内で合成ができないため、必ず食事から摂取が必要)
イソロイシン・ロイシン・バリン・ヒスチジン・リシン・メチオニン・トリプトファン・フェニルアラニン・スレオニン - 非必須アミノ酸(体内で合成されるが、様々な働きがあるため積極的に摂取)
アスパラギン・アスパラギン酸・アラニン・アルギニン・システイン,シスチン・グルタミン・グルタミン酸・グリシン・プロリン・セリン・チロシン
ところで、食べ物に含まれるたんぱく質の品質を見極める「アミノ酸スコア」という指標があります。アミノ酸スコアは9種類の必須アミノ酸のバランスを指し、それぞれのアミノ酸が全て必要量を満たしていれば、アミノ酸スコア100とされます。アミノ酸スコアの高い食品を接種することは、効率的な体作りを目指す上で欠かせません。
炭水化物(糖質)
身体を動かす即効性の高いエネルギー源、それが炭水化物です。
炭水化物の摂取が不足した場合、エネルギー不足による疲労感が大きくなる可能性があります。反対に摂取し過ぎると、消費されなかった炭水化物は中性脂肪に作り替えられて脂肪細胞に蓄積されます。体脂肪は体温維持など身体の中で大切な働きをしていますが、過度に増加すると肥満や生活習慣病の原因になってしまいます。
食品 | 量 | 炭水化物(g) | エネルギー(kcal) |
---|---|---|---|
ごはん | 茶碗1杯(150g) | 55.7 | 234 |
食パン | 6枚切り1枚(60g) | 27.8 | 149 |
うどん | 生麺1玉(150g) | 85.2 | 374 |
中華麺 | 生麺1玉(120g) | 66.8 | 299 |
スパゲティ | 乾麺1人分(100g) | 73.1 | 347 |
じゃがいも | 1個(150g) | 23.9 | 77 |
さつまいも | 1本(200g) | 66.2 | 254 |
肉まん | 1個(110g) | 43.4 | 266 |
カステラ | 1切れ(50g) | 30.9 | 156 |
醤油せんべい | 1枚(10g) | 8.4 | 37 |
脂質
脂質は1gあたり9kcalのエネルギーを生成する一方で、細胞膜やホルモン、脂溶性ビタミンの材料にもなります。食品の脂質の主成分である脂肪酸はその種類によって役割や特徴が異なります。
脂肪酸は健康と深く関わっており、生体にとって有益でもありますが、弊害を起こすこともあります。
多価不飽和脂肪酸は、カラダの中で合成できないため、食品から摂取する必要があります。そのため、必須脂肪酸と呼ばれています。
多価不飽和脂肪酸の中で、サンマやサバなどの青魚に多く含まれているDHAやEPAはよく知られているのではないでしょうか。また、近年注目されているアマニ油やエゴマ油にはα-リノレン酸が多く含まれています。
ビタミン
ビタミンは、エネルギー産生栄養素である糖質・脂質・タンパク質の代謝を円滑に進めて潤滑油のような働きをする栄養素です。身体に必要な量はわずかですが、体内でビタミンを合成できないため、食品から摂取する必要があります。
ビタミンは「脂溶性ビタミン」と「水溶性ビタミン」の2種類に分類されます。
脂溶性ビタミンには、「ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK」の4種類があります。
水溶性ビタミンには、「ビタミンC、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチン」の9種類があります。ビタミンC以外はまとめて「ビタミンB群」と呼ばれることがあります。これらは水に溶けやすい性質があり、過剰に摂取した場合は尿として排泄されますが、摂取量が少ない場合は、欠乏症を引き起こす可能性があると言われています。
ミネラル
ミネラルとは、人の身体に微量に存在する栄養素です。
身体の調整役として、身体の構成材料として、代謝などに関わる酵素の構成成分として、さまざまな働きをしています。身体で必要なミネラルの量はわずかですが、体内で合成ができないため、食品から摂取する必要があります。
多量ミネラル | 多く含まれている食品 |
---|---|
ナトリウム | 食塩、食塩を含む調味料 |
カリウム | 野菜や果物などのさまざまな食品 |
カルシウム | 牛乳、乳製品、魚介類、大豆・大豆製品 |
マグネシウム | ナッツ類、魚介類、豆類 |
リン | 玄米、そば、肉類、加工食品 |
ミネラルは不足した場合だけでなく、摂取しすぎた場合に起こる可能性があるカラダへの不調にも注意が必要です。また、それぞれのミネラルがお互いに影響を与え、吸収を阻害することもあるため、バランス良く摂取することが大切です。
バランスの良い食事が何よりも大切
今回は5大栄養素とその役割について解説しました。何よりも大切なことは、これらの栄養素をしっかりと必要な量だけバランスよく摂取することです。
ではその具体的な量やバランスはどのように決定されるのでしょうか?それを次回解説していきます。