2023年7月30日にモビリティリゾートもてぎ北ショートコースで行われたGPR Karting SeriesのCadetsクラス第6戦で、フォーメーションラップ1周目でスタートが切られた。セカンドグリッドからスタートした松尾柊磨(brioly racing)はトップチェッカーを受けたが、レース後に「スタート加速違反」というペナルティを受け順位が入れ替わった。
また同サーキット(当時はツインリンクもてぎ)で2021年11月20日に行われた全日本カート選手権OK部門第9戦予選ヒートでも、同じくフォーメーションラップ1周目にスタートが切られ、セカンドグリッドだった荒尾創大にレース後フライングペナルティが下された。
スタートの瞬間は誰しもが一発逆転を狙っているので、ギリギリのタイミングを見計らっているもの。カートレースの基本であるローリングスタートでは、各選手が微妙な駆け引きをしあっている場面でもある。しかし何故だろうか、フロントローのフライングはなんとなく納得し難いものがある。その判定が出た時、さっきまでの数十周は一体何だったのだろうかと、とてもモヤモヤしてしまう。
そもそもフライングというペナルティは何故発生するのだろうか?
GPRにおいてフライングは存在し得ないはず
そのような疑問を筆者が覚えたキッカケの一つに、2023年のGPRシリーズで特徴的なスタートのルールを採用していたことがある。スタートのルールは各シリーズによって微妙に異なるのだが、GPRのそれは松浦代表曰く「なるべく良い形になるように工夫した」ものだという。まずはレギュレーションを読んでみよう。
第31条 スタート方法(Cadets/Junior/OK)
4. フォーメーションが整い、スタートライン 25m手前に引かれたイエローラインとスタートラインの間でポールポジションの選手が一番初めに加速を開始したと競技長が判断したら赤信号を消灯してスタートとなる。この際、セカンドポジション以降の選手はポールポジションの選手の加速開始後に加速することが許される。
2023年 GPR カーティングシリーズ統一規則(6月16日改訂版)
GPRにおいてスタートの要件の一つに「一番初めにポールポジションの選手が加速を開始したと競技長が判断したこと」がある。つまりポールポジション以外の選手が先に加速したことを競技長が認識した時点で、スタートは切られてはならない。
ということは、あらゆる選手に対してフライングというペナルティが発生すること自体ありえないはず。
唯一あるとすれば、競技長が誤ってスタートの合図を出してしまった場合だろう。しかし競技長には「ミススタートフラッグを振る」という救済策がある。にも関わらず先に上げた例ではミススタートフラッグは振られていない。
スタートの判断を誤った上に、ミススタートフラッグさえも振りそこね、後からビデオ判定してドライバーへペナルティを与える。これは競技長がその瞬間に正しく判断できなかったミスを、ドライバーへ責任転嫁しているのではないだろうか?筆者はそう感じてならなかった。
奇しくも上記2例ともに競技長を務めたのは安達良三氏であった。筆者は2023年のGPR最終戦にて、当日も競技長であった安達良三氏、GPR代表の松浦佑亮氏、GPRレースディレクター塚越広大氏へ、フライングについて質問を行った。