2024年12月21日~22日にモビリティリゾートもてぎ北ショートコースにて行われた賞金レース「RDS HYPER KART RACE 2024」(以下ハイパーカート)では、毎ヒートごとに燃料検査が実施されていた。燃料検査とは文字通り車両に搭載されているガソリンを検査するもので、TT・QF・プレファイナル・決勝すべてのヒートで、技術委員長が任意に選んだ車両に対して行われていた。
週末を通して22回×複数台の燃料検査が行われたのだが、燃料検査によってIAME X30クラスで4台の失格が発生した。さらにその4台がTT(今回の場合はQualifying Practice)でヒート失格処分になって以降、失格は1回も現れなかった。なぜ4台は失格となり、なぜそれ以降に失格が現れなかったのか?
従来の燃料検査の問題点
もちろん全日本カート選手権など一定の格式のあるレースでも燃料の規定は存在している。一般的にドライバーは指定されたガソリンスタンドでガソリンを購入し、使用するオイルと混合比を自己申告。それに沿った燃料であるかどうかをすべてのヒートが終了した後の車検で主催者が検査することになっている。参加者と主催者で規定量のガソリンを一定期間保存し、もし燃料違反が発覚した場合はさらなるチェックが行われる。
ところが皆様のご想像の通り、燃料検査は正確にやろうとすればするほど難しい。厳密に検査するのであれば専門の検査機関にガソリンを送り、1件あたり数万円の費用と数日の時間をかけて行う必要がある。故に燃料検査を本当の意味で実施するオーガナイザーというのは限られてくるだろう。かつて1Lあたり数千円もするレース専用ガソリンが横行した時代もあったように、燃料検査が非現実的であることを利用して、規則と異なるガソリンを使用するユーザーが存在するのも確かである。
ハイパーカートでの燃料検査
今回のハイパーカートでは燃料の不正を防ぐため、モビリティリゾートもてぎ内でのガソリン購入はもちろん、エンジンオイルの銘柄と混合比までを開催された3クラス全てで統一。NUTEC NC-35Mを4%(25:1)混合した燃料のみがレースでの使用を許された。ハイパーカート主催者は、参加者全員に同じ燃料を指定し、毎ヒート同じ検査機器を用いた燃料検査を実施。従来より簡単でスピーディーな方法で公正なレース運営を実現しようとしたのだった。ちなみに希望すれば主催者が用意した混合済み燃料を購入することもできた。
この検査機器は金色のセンサー部分を燃料に漬けることで燃料の成分を測定する。結果が出るのは数秒しかかからない。見れば明らかなようにこれは非常に簡便で、センサー間のガソリンの電気抵抗値から燃料の成分をおおよそ判定していると思われる。専門機関レベルの成分検査はもちろん不可能で、これである程度正確に検査するためには燃料やセンサーの温度を一定に保つ必要がある。ガソリンの成分を厳密に検査することは大変に難しいため、「そもそも検査機器と検査方法の信頼性はどうなのか?」と疑念が湧いてくる部分も確かにあった。
しかし、実際に運用しているのを見ていると、わずか数秒の検査を複数台に連続して行うため、少なくともセンサー部分の温度変化はそのセッション間では大きな差は無いだろうと思われた。そして最も興味深かったのは、指定燃料では基準値からほとんど数値のブレがないのに対し、失格になった燃料は明らかに数値がズレていたという点だ。
つまり、その燃料が正確にどういう状態なのかを知ることは難しいが、指定燃料と違う状態であることは明確だった。
ちなみに失格になったのは4人だけだったが、「自分の燃料も心配なのでチェックしてほしい」と車検場にやってきた人の中にも基準値から外れた数値が出る燃料が存在した。彼らは燃料に対して具体的に何をやっていたのか?やはりここは気になるところ。