11月6日に鈴鹿サーキット国際南コースを訪ねてみたところ、SL全国大会の1週間前とは言えどもローカルレースである鈴鹿選手権が近いということもあって結構な台数が走行を行っていた。主にAVANTIやX30、MAXなどが走行を重ねている中、INTREPID JAPAN CORSEの佐藤奨二監督の姿も見受けられた。2015シーズンのKFではチーム監督、また鈴鹿選手権のROK SHIFTERのドライバーとして活躍している佐藤選手、今日もROK SHIFTERで走るのだろうと思っていたがどうも様子が異なる。用意しているカートにはシフトレバーやフロントブレーキがなく、しかしKFとほぼ同等の見た目をしたエンジンが搭載されたそのマシンは、来シーズンの全日本カート選手権トップカテゴリーとなるOKカテゴリーマシンだった!
シンプルで軽量なOKエンジン
搭載されていたエンジンはVORTEX DDS。KFから比べると、クラッチやセルモーターが廃止されたためより一層コンパクトな造りとなっており、配線もほとんどないためKT100SDに水冷のホースがついているのとほとんど変わらないほどに簡単にエンジンを搭載できるという。ただし従来までエンジンに内蔵されていたウォーターポンプはX30のように外部ポンプへと移された。ちょうど水冷100ccチューニングエンジンを思わせる造りとなっている。
OKはレーシングカートの進化の形と思われたクラッチ&セルスタートをまさかの廃止にし、ダイレクトドライブとなったことがある意味でエポックメイキングな出来事だった。カートはシンプルな構造こそがベストだと言わんばかりの原点回帰で大胆な変更だったが、下手をすると若年層ドライバーは押し掛けなんて一度もしたことがないのが昨今のレーシングカート界である。またリアスポイラーが標準化しているため、昔の鉄パイプリアバンパーと比べると押し掛けが容易とはいいがたい。それらの事情に合わせてか、OKではエンジンヘッドにデコンプバルブを装着し、エンジンの圧縮を一時的に抜くことで押し掛けをより容易にしている。実際に見てみると、バルブを押すだけの簡単な造りとなっており、デコンプ状態ならばプラグを挿していても手で簡単にタイヤを回すことができる。INTREPID JAPAN CORSEでは今回のテストがOK初走行となり、エンジンも完全に新品ということもあって、朝一番は少しエンジンのかかりに難があったものの、一度動き始めてしまえばエンジン始動は思っていたよりも簡単な様子。ドライバーがカートに乗車した状態でメカニックが後ろから押し、スピードが乗ったところでアクセルを開けばエンジンが始動、それと同時にデコンプバルブが閉まりパワーを完全に発揮することができる状態となっていた。
走りは軽やかで、とにかく速い!
御託はさておき実際の走行の様子をお伝えすると、第一印象としてとにかく速い!エンジン回転数がKFから比べて1,000rpmアップの16,000rpmがレブリミットとなったが、音自体はKFと大差なく、2010年のSuperKFぐらいのイメージであった。ただし最低重量が13kg軽い145kgとなった影響でとにかく動きの軽さが目立つ。テスト日はKFが走っていたわけではないので純粋に比較することは難しいが、X30(ラップタイム約50秒)とはタイム差がありすぎて比較対象とはし辛く、最低重量175kgと超重量級のROK SHIFTER(ラップタイム約48秒)と見比べてしまうと余計にOKの動きの軽さが際立った。とくにS字やシケインの動きは他カテゴリーを圧倒している。ハンドフロントブレーキがなくなったため今やKFならではとなった強烈なブレーキングは見られなくなったが、軽やかな動きを見せるOKのラップタイムは筆者が計測した限りで46秒後半といったところ。ちなみに鈴鹿サーキット国際南コースのKFコースレコードは2013年のKF1時代に福住仁嶺が残した46.774秒であり、これは南コースで公式計時された最速記録でもある。今回のINTREPID JAPAN CORSE のOKマシンはシェイクダウンですでにそれに近いタイムをたたき出した。これからエンジンチューン、シャーシセット、タイヤ開発などが進んでいけば、もしかすると来年の全日本カート選手権最終戦鈴鹿大会では45秒台に突入する可能性も見えてくる。これは途方もないスピードだ。
軽量化、そしてフロントブレーキの廃止。テスト当日の様子を見ている限りKFからの移行となると各チームともにかなり手こずることになるのではないかと今回のプライベートテストから予想されるほどに、OKとはKFと異なるカテゴリーだということが判明した。エンジンの変更を含め様々な規定が変わる来シーズンは、今シーズンとは全く違った様相をみせるだろう。シンプルで軽量というレーシングカートの原点に戻ってきたOKカテゴリー、このレースが今から楽しみで仕方がない。