Paddock Gateでは今話題のトヨタ自動車が送り出した入門向けレーシングカート「GR KART」を徹底解剖するべく購入!前半記事では組み立てからポジション調整までを行いましたが、その簡単さと質の高さには驚かされるばかり。この後半記事では、実際に走行したインプレッションと、GR KARTの創る未来について話していきます。
※GR KARTは一般ユーザーへのデリバリーが11月1日以降となっています。この記事ではソニックパーク安心院から車両をお借りして撮影を行いました。

ファーストインプレッション
GR KARTは特にセッティングできるポイントが無いので、全て工場出荷状態で走行インプレッションを行います。唯一タイヤの空気圧とフロントタイヤのトー角は調整可能なので、空気圧は届いたときに設定されていた100kPaに合わせ、トー角は触っていません。
まっさらな新車のGR KARTでアクセルを踏み始めると、まず最初に感じたのはハンドルの軽さです。レーシングカートに比べると明らかにハンドルが軽く、ピットロードの低速状態でも若干クイックな印象です。皮のむけていない新品タイヤは最初のコーナーこそ滑るのが気になりましたが、コースを1周する頃には特に問題になるような事はありません。タイヤの温まりはかなり良さそうなので、割と走り始めてすぐにペースを上げていくことができました。

走っていてはっきりと分かるのは、このカートはフロントの反応が過敏だということです。ハンドルを切るやいなやノーズがイン側に向き、旋回が始まります。ただしそれに対してリアが付いてくる感じが薄く、基本的にリアが耐えてくれません。イン巻きするほどではないにせよ、オーバーステアな印象がかなり強いです。
ハンドルをギュッと切ってみるとインリフトするのが分かるのですが、同時にフレームが非常に硬いこともわかります。おそらくステンレス製のリアアクスルシャフトもこれに加わっています。ショートホイールベース・ナロートレッドなディメンションに、短いスクラブ半径と硬いフレームが組み合わさり、クイックと言うよりもピーキーな乗り味です。コーナリング中にハンドルを切って待つ動作をしたくても、リアがいとも簡単に流れてしまいます。コーナー入口以外でハンドルを切れるタイミングがほぼありません。はっきり言って乗りやすいとは言えません。

エンジンパワーは意外とあり、大体MZ200と同じかちょっとこちらのほうが速いぐらいにも思います。エンジンパワーだけで言えばレンタルカートとも大差ないのですが、車両重量が83kgと、一般的にレーシングカートとほぼ変わらないこともあり、かなり軽快な印象です。現段階ではギア比の調整もできないGR KARTですが、ソニックパーク安心院ではホームストレートの後半でリミッターが当たる様子も見られ、最高速度はGPS計測で約80km/h。汎用4stエンジン搭載車としては十分速いです。
ベルト駆動なのですがオートテンショナーでベルトが強めに貼られているためか、ヒュンヒュンというベルト鳴きのような音が聞こえます。またアフターファイヤーのパンパン音が鳴らないという話を開発者から伺った記憶があるのですが、偶に鳴っていました。キャブは何も触っていませんが、もしかしたらセットが合っていなかったのかもしれません。マフラーの出口が下を向いているためか、外から走っているのを見たときにはかなり静かな印象です。

タイヤのグリップ力はおそらくDUNLOP SL22等のSLタイヤと比べると劣っています。タイヤメーカー各社の「グリップする方のレンタルカートタイヤ」ぐらいの印象です。どちらかと言えば縦が強く横が弱い感触で、高速コーナーでは適度に滑ります。GR KARTのスピード感に対してはちょうどいいのですが、もう気持ち横があったらなぁという感触もあります。ただ横が強くてもシャーシが耐えてくれる気がしません。
GR KARTで特出すべきはブレーキです。ブレンボ製のマスターシリンダーとキャリパーが奢られ、フローティングのブレーキローターとなっています。おそらくバイク用の部品が流用されており、スタンド上で触った限りだとストロークが短く不安でしたが、いざ乗ってみるとかなり細かくブレーキコントロールが可能です。踏み始めからロックするところまではもちろん、ブレーキを徐々にリリースするところもかなりコントローラブル。このブレーキフィールには舌を巻きました。

ペースを上げて耐えないリアを耐えさせようとさせると、コーナリング中にリアが跳ねる動きが出てきました。右コーナーで顕著に現れるので、おそらく重量バランスの関係もあるのでしょう。シートが大きく身体がズレることもあって、跳ねると身体が結構痛いです。フレームの硬さゆえに縁石に乗ったときの衝撃も大きく、ちょっとつらい。シートの隙間を埋めて、身体をなるべく中央に寄せたいところ。跳ねるカートを抑えたくてアクセルを開けたくなるのですが、そうすると曲がらなくなります。速く走らせようと思えば思うほど難しい。
全体的な動きの傾向から言っても、2000年代以前の「腰で乗る」スタイルで走りたくなります。ただシートがデカくて腰で乗れない上に、積極的に滑らせられるほどのパワーもありません。なるべく横を使わず、短い時間で向きを変えて縦に走らせるドライビングスタイルがGR KARTにはマッチしそうです。
38.5万円で新車が買える価値
ここまでのインプレッションだけで見ると、とても出来の悪いカートに見えるかもしれません。しかしこれはあくまでも「レーシングカート基準」で見たときの話です。GR KARTは現代のレーシングカートのように、まるでサスペンションを持っているかのような靭やかさはありませんし、レーシング2stエンジンのようなパワーもありません。

一方GR KARTという乗り物単体で見たときには、コストパフォーマンスに優れた素晴らしい車両に思えます。これがフルコンプリート38.5万円で購入できるという事実は2026年現在においては衝撃的というほかにありません。それでいてたった83kgの車両重量と、とにかくコンパクトな車体サイズが生み出す動きは極めてレーシー。現役のカーターであってもそこそこ汗をかきながら走ってしまうぐらいには「スポーツしてる」実感が得られます。
はっきり言ってだいぶ荒々しいドライビングフィールではありますが、それが楽しさに繋がっているところは実際にあります。どうにかしてこれをうまく走らせようと試行錯誤するのは単純に面白いです。仲間同士で1台をシェアしてワイワイ言う未来が容易に想像できます。このカートがたくさん売れれば、平日やイベントのない週末であっても、サーキットが賑やかになることは間違いありません。
それでいて走り出すのがとにかく楽で、片付けもほぼ必要ありません。僕はこの日、走り出すためにはガソリンを入れてタイヤの空気圧を調整し、各部のボルトが締まっているか確認しただけです。また走行終了後もガソリンを抜いて軽く掃除しただけ。チェーンルブの飛び散った汚れもなく、ゴミ袋にはカウルを拭くのに使ったウエスしかありません。ほぼレンタルカートを乗りに行ったぐらいの感覚でマイカートを楽しめる気軽さは革命的にも思いました。これは本当に嬉しい。

とは言え文句をつけたいところも沢山あります。現状では初心者が素直に乗れるとは思えないピーキーさですし、一方で上級者にとっても好ましいマシンとは思えません。どうにかセッティングをしてGR KARTを改良してきましょう。









