【コラム】レーシングカート≠マリオカートだと分からせる唯一の方法

マリオカートってご存知でしょうか?おそらくPaddock Gateを読んでいる人のほとんどは知っているでしょうし、一度ぐらいはプレイしたことがあるでしょう。任天堂のキャラクターたちがレーシングマシンに乗って、バナナの皮や亀の甲羅といった不思議なアイテムを駆使しながら、奇妙奇天烈なコースを周回して一位を目指すという傑作ゲームです。初代の発売は1992年なので、ゲームのシリーズ作品としてはかなりの長寿です。僕は64版やDS版ぐらいしか遊んだことがないのですが、大好きなゲームの一つです。中立の怪しくなったコントローラーのステックを駆使し限界を攻めながらトップを走っていると、ゴールを目の前にして青色の甲羅が激突しクラッシュ。僕の隣を悠々と駆け抜けトップチェッカーを決めるマシンに悔しさを感じつつ顔を横に向けると、ニヤリと笑う顔が目に飛び込んできます。その瞬間僕は気づくのです。「あぁ、僕が本当に欲しかったのはゲーム機でもソフトでもなく、一緒に遊ぶ友達だったんだ」と…。

レーシングカートってマリオカートじゃん

僕の思い出話はさておき、レーシングカートという世間一般からの認知度の低いスポーツを楽しんでいる読者の皆さんにとって最も困る時と言えば、「レーシングカートとは何ぞや?」ということをご友人に説明するタイミングではないでしょうか?小型の車に乗ってレースをするんだと言ったところで、「遊園地のゴーカートとは違うの?」「うちのお婆ちゃんですら車の運転ができるのに、それのどこがスポーツなの?」と言われたこともあるでしょう。僕は数え切れないほど経験しています。いやいや違うんだと写真でも見せようものなら、ほぼ100%の確率で次の言葉が飛んでくることでしょう。

 

「なにこれマリオカートじゃん」

 

…確かに!

参照:任天堂
最新作では空を飛んだり水中を走ったりするそうです

誰もレーシングカート=マリオカートだなんて本気で考えていない

マリオカートとレーシングカートはそっくり、というよりもむしろレーシングカートをデフォルメもしくはアレンジして生まれたのがマリオカートなわけですから、人々がレーシングカートを見たときに「マリオカートだ」と思うのは至極当然です。その二点が結びついたとたん、誰しもが「コースアウトすると釣り竿で吊られる」「亀の甲羅を投げつけたりできる」というイメージが浮かび、ついついレーシングカートについて真剣に語る我々を茶かしてしまうのも仕方がありません。しかし、馬鹿にされたからと言って怒ってはいけません。なぜなら誰も、目の前の友人がキノコを使うと加速する乗り物でレースをしているなどと考えてはいないからです。ゴリラの運転する自動車や、宇宙空間を走る虹色のサーキットが実在しないことぐらい誰でもわかります。まぁでも、バナナの皮を踏むとスピンするのは本当だと思ってる人は割といるようです。僕もカートでバナナの皮を踏んだことはないので、一度試してみたいな~とは思ってますが…。

ごくごく稀に「マリオカートで勝つことの凄さ」を引き合いにレーシングカートを下に見ようとする人もいますが、そんなものはウサイン・ボルトと羽生善治のどちらがすごいかを比べるようなものです。

経験の足りなさがすべての原因

「俺ならウサイン・ボルトをぶっちぎれる!」と豪語する酔っ払いのオジサンはいないのに、「俺のほうがミハエル・シューマッハよりも運転がうまい!」と信じて疑わない人間がいるのはなぜでしょうか?それは一重に経験の無さにあると考えます。自分の脚で全力疾走したことが無い人はあまり多くありません。ゆえにウサイン・ボルトがどれほど凄いのかは誰しもが容易に想像できます。それでもなお俺は速いと豪語する人は、想像力がよほど欠如しているか、あるいは本当に100mを9秒台で走れる人のどちらかでしょう。

一方でこの世のほとんどの人はサーキットでのスポーツ走行をしたことがないどころか、自分の車のアクセルを底まで踏んだことのある人のほうが少数派です。しかし原付も含め運転免許を所持している人は平成29年の日本だけでも8200万人以上(警視庁 運転免許統計より)おり、ゲームで峠道や高速道路を走ったことのある18歳未満も数多くいます。それこそがすべての原因。歩いたことのない人は、自分が走る姿を想像すらできません。しかし、歩いたことしかない人は、自分がどれだけ速く走れるのか想像したとき、期待に胸を膨らませ、そして口にするのです。「俺のほうが速く走れる」と。

プログラミング系のエンジニアがよく言うアレ

物事を深く理解している人ほど謙虚なものです。僕らもそのような「自称シューマッハよりも速い男」に対して謙虚な姿勢を取らなければなりません。彼が自分と親しい人間であればあるほど、やることは限られてくるでしょう。そう、【何もわからない谷】に突き落としてやるのです。

レンタルカートに誘いましょう

メディアの役割を放棄していると後ろ指を刺されたっていい。レーシングドライバーがどのようにすごいのかなんて、モータースポーツを経験しない限り理解できません。上手すぎるドライバーのオンボードほど簡単そうに見えるのがよくない。画面の向こうからは、ハンドルの手応えも強烈な横Gも、リアタイヤが路面を捉える感触も伝わってきません。経験したことがない限り。

逆に言えば、経験度を0から1にするだけでも全然違います。つまり僕らがとるべき具体的な方法とは、友人と共にレンタルカートを乗りに行くことの他ありません。幸いなことに、日本国内にはレンタルカートが楽しめるサーキットが数多く存在します。今すぐ近所のサーキットの営業日時を確認してください。今は年末年始なわけですから、ゲームに興じる友人をコタツから引っ張り出しさえすれば、サーキットまで連れて行くのはそう難しいことではありません。友人にヘルメットを被らせシートに座らせたら、可能な限りオーバーテイクを繰り返すのです。乗ると加速する不思議な板も、空中に浮遊する謎のアイテムボックスもない世界で、友人にできる事はただ走り続ける事だけです。

茫然自失でピットに帰ってきた友人に、次のセッションで走るレーシングカートのさらなる速さを見せつけてあげると、効果は倍増します。モータースポーツの鱗片を味わい、何もかもが分からなくなった彼に対しかける言葉はただ一つ。

「次はいつ走ろうか?」

そうすれば、僕らの勝利は約束されたも同然です。

文:藤松楽久

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