全日本/地方/ジュニアカート選手権に採用されているレギュレーションは3年という期限をもって定められており、2019年は現行規則の最終年度に当たる。通常であればここでレギュレーションの一部見直しあるいは継続が行われるのだが、今年は少々様子が異なるという話が、関係者から囁かれている。
FP-JrのエンジンがX30 Juniorになる可能性
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全日本カート選手権の関係者の中でまことしやかに囁かれているある噂話がある…。それは、「2020からFP-Jr CadetsクラスがMiniクラスへと変更されるのではないか?」という話だ。
今シーズンが開始される前の2月末、我々はFP-Jr Cadets部門のエンジンが60ccのMiniへ移行するのでは?という情報を発信した。とある関係者によると、どうやらこのMiniカテゴリーの導入という話は白紙に戻されたという。
ところが今度はその一つ上のクラスであるFP-Jrのエンジンを変更しようという動きが浮上しているらしい。そしてその変更されるエンジンは、IAME X30 Juniorが検討されているという話だ。
X30 JuniorはX30の低出力バージョン
IAME X30は全日本FS-125部門はもちろんのこと、日本全国ではいくつかのサーキットではローカルシリーズも開催されている、2st水冷125ccのハイパワーエンジンだ。今シーズンでは車両規定が変更され、一体式のマフラーやインテークサイレンサーの純正指定などが行われたことは記憶に新しい。例外も多数あるがユーザーは10代半ばが多く、主に若年齢層に向けたカテゴリーであると日本国内では認知されている傾向にある。
さて、話題のX30 Juniorはその低出力版となる。リストリクター等によって出力が元々の30Hpから21Hpへと低減され、トルクは8.5Nm落ちた11Nmとされている(IAME X30 Junior SPEC.EUの数位を参照)。現行のFP-Jrが採用しているYAMAHA KT100SECはおよそ15Hp程度の出力と言われるため、それと比較すると少々のパワーアップとなるX30 Junior。しかしほぼ同等のターゲット層に向けたエンジンであるROTAX 125 Junior MAX EVOが23Hpであることを考えると、そのパワー感はおおよそ想像できる。
コジマブレーンファクトリーが扱うIAME X30の価格は定価で税別38万円。X30 Juniorは構造的に元のエンジンとほぼ変化がないことを考慮すると、おそらく価格もほぼ同じになると予想される。その場合はROTAX 125 Junior MAXと同価格帯に位置するだろう。
マテリアル変更のメリット・デメリット
X30 JuniorがFP-Jr部門に採用された時のメリットを考えてみよう。まず第一に思い浮かぶのは、FP-Jrから地方/全日本FS-125部門へのスムーズなステップアップである。同一のエンジンを使用するため、エンジン的には小部品の組み換えのみで対応となり、ここのステップアップでのユーザー負担はぐっと軽減される。ただしこれは費用の前払いに過ぎない。
また同時にFP-JrかFS-125かを選べる年齢のドライバーにとっては、自身の体格やドライビングレベルの成長に合わせた柔軟なカテゴリー選択ができるようになる。しかし、往々にしてジュニアドライバーは上位カテゴリーへの早期移行を望む傾向にある。ゆえに下位カテゴリーの参加者減少を促進してしまう可能性は否めない。
反面として問題となるのが、現状でも日本国内のレーシングカートユーザーに対して多すぎるのではないかと指摘されているカテゴリー数が、また一つ増えてしまうことだ。現状でKT100シリーズを使用するYAMAHA SS(≒FP-Jr)とROTAX Junior MAXが存在するジュニアが参加可能なカテゴリーに、新たな選択肢となるX30 Juniorが加わることは、現在のジュニアの参加数を考えると参加者の分散が起こる危険性をはらんでいる。特にジュニア時代というは、プロやホビーに至るまでの通過点に過ぎない。ここに複数の選択肢があることは、ホビーカーターにとってのそれとは大きく意味合いが異なる。
X30というカテゴリー自体、2019年現在でローカルシリーズで実際にレースが開催されているのはツインリンクもてぎ・フェスティカサーキット瑞浪・鈴鹿サーキットの3か所のみである(Paddock Gate調べ)。残りは全日本カート選手権FS-125部門と、DUNLOP NEXT CUP、そして一部イベントレースで使用されているだけで、ユーザー数が減少傾向にあるのが国内X30の現状だ。もちろん、FP-JrがX30 juniorとなることで、ローカルのX30がより盛り上がりを見せる可能性はある。しかし、ジュニアカート選手権の2019シーズンは現在東西共に3レースが終了したが、合わせてわずか40人が参加したに過ぎないFP-Jrのメンバーが全員X30を購入したところで、その影響が全国のローカルシリーズへと波及する様を想像するのは難しい。
期限は8月末
X30 Juniorには、スペックの比較対象に上げた類似のコンセプトを持つROTAX 125 Junior MAX EVOをはじめとして、PRD AVANTI、ROK Junior、そしてもちろん現行のYAMAHA KT100SECといった競合製品が存在する。国内レーシングカートジュニアカテゴリーのデリケートな現状を考えると、入札と並行して各製品のメリット・デメリットを精査しながら慎重に次期マテリアルを決定しなければならないが、そういった商習慣を無視してレギュレーションが検討されている、と不満を漏らす関係者の声もある。
例年通りであれば、翌年の日本カート選手権規則は前年の8月末ごろに制定、公示される。残された短い期間で、既存のユーザーや将来の参加者のことを考えた、よい決断が下されることを期待したい。
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